『スタンフォードの自分を変える教室 』 ケリー・マクゴニガル (著), 神崎 朗子 (翻訳)を読みました。
本書の原文のタイトルは『The Willpower Instinct』です。
訳すと、意志の力の本能になります。
意志の力は、目標達成にはかかせないものです。
意志の力と対極にあるのが、衝動的な本能です。
いかに衝動的な本能をコントロールしながら、意志の力を最大限に発揮するのかを知りたくて本書を手に取りました。
本書は10章からなる、トレーニングプログラムの形となっています。
1章から順に読み解いていくことで、意志の力をてなづける方法を見につけていきたいと思います。
今回は3章「疲れていると抵抗できない」についてまとめます。
意志の力は有限である
著者は、意志の力は有限であるというバウマイスターの仮説を紹介しています。
この仮説によると、意志の力は有限のリソースであり、脳はその使用を厳しく制限しているのです。
著者は、この仮説を意志の力は筋肉に似ていると述べています。
禁煙を行った喫煙者がアイスクリームをどか食いする率が高まるという事実は、この仮説で説明できます。
意志の力は筋肉のように、朝起きてからどんどん疲労が積み重なっていくので、大事なことをやるためには朝早い時間帯にやる、などの工夫が必要です。
意志の力と血糖値の関係
砂糖入りの飲料水を飲ませたグループと、血糖値を上げない甘味料入りの飲料水を飲ませたグループでの、意志の力を比較する実験では、砂糖入りのグループの方が意志の力をより強く発揮できたという結果になっています。
しかし、血糖値が高いからといって意志の力が高まるわけではありません。
著者は、血糖値の方向性が意志の力を左右すると説明しています。
つまり、血糖値が上昇方向にあるときには意志の力が高まり、逆に下降方向にあるときは意志の力が弱まって衝動的な行動が高まるのです。
著者は、血糖値急激に上昇させることは、その後の急低下をもたらすことから、お菓子よりもナッツというように、血糖値をゆるゆかに上昇させる食物の摂取を薦めています。
糖質制限によって、血糖値を一定に保つことは、意志の力を安定させるのに役に立つということがわかりました。
疲労は脳が体をだましている
筋肉が疲労してもう動けないと感じているときでも、生理学的には筋肉はまだ能力を発揮できる状態にあることがわかっています。
これは体を限界まで酷使しないようにするために、脳が体をだましている状態だと著者は分析しています。
そして意志の力にもそれが当てはまります。
疲れて意志の力は使えないと感じているときでも、それを意に介さずに行動できる人もいます。
この意に介さない力は、筋力のように鍛えることができます。
著者は、行動するときに常に難しい方を選ぶ習慣が意志力筋を強化すると強調します。
1章で述べられた3つの意志の力のうち、望む力を発揮することでも、疲労を乗り越えることができます。
特に、他者への貢献を考えたとき、人は自分の疲労を意に介さなくなります。
まとめ
意志の力が有限であるという説は、ともすれば都合のいい言い訳に使ってしまいがちです。
疲れているからできなくて当たり前、という言い訳です。
まずは疲れないように意志力筋を強くすること、そして疲れを意に介さないことが重要です。
疲れを意に介さないためには、他者への貢献を考えることが効果的です。
本章には書いていませんでしたが、意志の力に頼らないことも大切だと思います。
意志の力に頼らないためには、習慣化して無意識にやってしまうことと、とりあえずやってみることでやる気を起こすことの2つの方法があると思っています。
『スタンフォードの自分を変える教室』 【第1章レビュー】意志の力とはなにか
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