『スタンフォードの自分を変える教室』 【レビュー】第5章 脳が大きなウソをつく

スタンフォードの自分を変える教室 』 ケリー・マクゴニガル (著), 神崎 朗子 (翻訳)を読みました。

本書の原文のタイトルは『The Willpower Instinct』です。

訳すと、意志の力の本能になります。

意志の力は、目標達成にはかかせないものです。

意志の力と対極にあるのが、衝動的な本能です。

いかに衝動的な本能をコントロールしながら、意志の力を最大限に発揮するのかを知りたくて本書を手に取りました。

本書は10章からなる、トレーニングプログラムの形となっています。

1章から順に読み解いていくことで、意志の力をてなづける方法を見につけていきたいと思います。

5章「脳が大きなウソをつく」についてまとめます。

報酬系という脳のモチベーションシステム

1953年モントリオールのマギル大学のジェームズ・オールズとピーター・ミルナーは、ラットの脳のある部分の刺激することで、ラットが何度もその刺激を求めるように行動するという部分があることを発見しました。

ラットは、目前にあるエサを見向きもせず、苦痛さえも我慢して、その刺激を求め続けるのです。

この実験はやがて人間にも応用されました。

被験者はラットと同じように、その刺激を発動させるボタンを自分から何度も、実験者から止められるまで押し続けたのです。

この脳の領域は、当初は快感をもたらす場所だと考えされていましたが、そうではないことがわかりました。

もう少しで快感が得られるという、欲求をもたらす場所だったのです。

それが報酬系と呼ばれる領域です。

報酬系とは、脳の中でも最も原始的なモチベーションのシステムで、行動を促すために発達したものです。

報酬系のメカニズム

脳は報酬が手に入りそうだと認識すると、ドーパミンを放出します。

ドーパミンが放出されるときに感じるのは、幸福感ではなく、むしろ興奮に近いものです。

2001年スタンフォード大学のブライアン・クヌットソンは、「ドーパミンには報酬を期待させる効果はあるが、報酬を得たとという実感はもたらさない」ことを明らかにしました。

報酬が得られると予感したときの脳の活動と、実際に報酬が得られたときの脳の活動は違っていたのです。

報酬系が作動したときに人が感じるのは、「期待」であって「喜び」ではないのです。

人間は長い間狩猟採集生活を行ってきましたが、食べ物を得るために、面倒を乗り越えてでも行動をすることが必要でした。

この報酬系の働きのおかげで、面倒を克服して行動ができ、生き延びてきたと言えます。

しかし、現代社会は狩猟採集生活時代とは違って食料はあり余っているため、報酬系の作用はむしろ害として作用しています。

マスメディア、インターネットによる広告は、報酬系をたくみに利用して、人々の購買意欲をかきたてています。

報酬系を利用する

報酬系の作用は、利用されるより、自らうまく利用すべきと著者は薦めています。

つまらない作業は、報酬を設定することによって楽しくすることができます。

著者は、それを「ドーパミン化」と表現しています。

報酬系は、確実なものより、思いがけないものの方が高まります。

通常は手に入らないようなお金であったり、希少価値のあるものに対して、報酬系はより活発に働きます。

報酬系の裏側にはストレスが潜む

脳でドーパミンが放出されると同時に、ストレスホルモンも放出されます。

そのため、報酬の期待にワクワクするのと同じくらいの不安やプレッシャーを感じるのです。

期待に向かっているとき不安を感じるのは、それが手に入らないせいではないのです。

期待をするせいで、ストレスを感じるということに気づくことが重要です。

しかし報酬系は人間にとって大切なものです。

ドーパミンが十分に生成されないパーキンソン病のような病気は、人を憂うつで情緒不安定にさせます。

人間が社会生活を行ううえで、報酬系がもたらす欲望や、やる気は必要なものです。

まとめ

ぼくはドーパミンは幸せホルモンだと思っていましたが、これは違っていました。

あくまでも、期待を感じさせてモチベーションを高める物質なのです。

現代社会は、まやかしの報酬に満ちあふれています。

自分がやるべきこと、やりたいことを実現するために報酬をうまく利用していきたいと思いました。