『仮想通貨はどうなるか』 【レビュー】ブロックチェーンの将来 編

野口悠紀雄氏の著書『仮想通貨はどうなるか』を読みました。

ぼくは同氏の『仮想通貨革命』を2016年9月に読み、ビットコインの革命性とビットコインによって起こる可能性を知りました。(レビュー)

そのあと2017年後半にはビットコインを含むアルトコインのバブルが起こり、一夜にして億を超える資産を手にする人が続出しました。

約1年が経過した2018年11月現在、そのバブルは冷めてビットコイン価格はピーク時の1/5程度になっています。

投機市場によって注目された仮想通貨は、ようやくその本来の価値を世の中に提供するステージを迎えます。

野口悠紀雄氏は、今後仮想通貨が起こす進化を本書で解説しています。

仮想通貨はブロックチェーンの1つの機能であって、ブロックチェーンによって様々な新しいテクノロジーが生み出されようとしています。

野口悠紀雄氏が紹介したあらたなブロックチェーンによるプロジェクトを紹介します。

『仮想通貨はどうなるか』保険・医療分野

P2P保険とは、何人かの人が資金を拠出し、グループ内の個人に起きた事故に保険金を支払う仕組みです。

パラメトリック保険とは特定の事象の生起に対して保険金を支払うものです。

従来の保険だと手続きが面倒なためは申請を行わないことが多いと言われています。

例えば、旅行の遅延保証では、実際に飛行機が遅れたとしても、手続きが面倒と感じて請求をしない契約者が半数以上いるとのことです。

天候に起因する交通コストをカバーする保険も出てきています。

予測市場を利用した保険は、ブロックチェーンを用いれば、胴元が不要になるので、不正のない取引が実現できます。

病院間の安全なデータ共有体制はまだ確立されていないこのため、複数の病院に通っている患者が、どんな薬を服用しているかさえ医師が把握していないことも多いのが現状です。

ブロックチェーンを使うことによって、安全かつ簡単に医療データを共有するための取り組みが始まっています。

IoT分野

むやみにIoTでものをつなげれば、経済的に無意味であるばかりでなく、きわめて危険な状態を作り出してしまうことになると野口氏は警笛を鳴らしています。

中央集権のシステムの場合、つながる機器の数が増えすぎると、中央のシステムに負担が重なり、動作の不具合を起こす可能性が高まってしまいます。

IOTAと呼ばれる新しい仕組みのチェーンが2016年7月にスタートし、注目されています。

これはブロックチェーンの代わりにDAGという仕組みを使っています。

DAGではブロックではなく、個々の取引同士が繋がります。

そして前の二つの取引を承認しなければならないというルールが定められていて、利用者1人ひとりが取引の承認者になるため、ビットコインのように取引を承認するマイナーに報酬を支払う必要がありません。

このため取引手数料が無料になっています。

公証分野

正しい情報は何かということについて、これまでは証人に証明してもらい、登記をするという方法が取られてきました。

これは遺言証書、不動産の所有権、知的財産のような重要な情報に関して使われてきました。

イギリス政府の公文書管理機関である、ナショナルアーカイブが、公文書の正確性を証明するためにブロックチェーンを活用する予定であると発表しました。

公証制度は、重要な契約書等について、交渉人が公正証書などで内容証明する制度です。

2018年3月末時点で日本で全国300カ所の公証役場に497人の公証人がいます。

内閣官房の推計によると、定款認証による手数料収入は年50億円となっており、公証人1人当たりの収入が約1000万円と言われています。

交渉人の履歴は公表されていませんが、裁判官や検察官の経験者らが大部分と言われていて、民間からの登用はほとんどありません。

ブロックチェーンによる真正性の確保で公証にかかるコストは大幅に削減され、人々が適正な権利を容易に得られるようになります。

しかし、この公証制度は開放が進んでいるとはいえません。

透明性が高く、信頼性が確保された社会を構築するチャンスを、既得権益が妨害していると、野口氏は憂いています。

まとめ

仮想通貨が投機市場によって大きく注目を浴びましたが、その背景にあるブロックチェーン技術はまだまだ世の中にインパクトを与えるまでには至っていません。

野口氏が紹介したように、ブロックチェーンによって透明性、信頼性が、管理者を信頼することなしに保たれるようになります。

これによって、より安価で、誰もが、その能力を発揮できる公正で平等な社会が実現できると思います。

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