野口悠紀雄氏の著書『仮想通貨はどうなるか』を読みました。
ぼくは同氏の『仮想通貨革命』を2016年9月に読み、ビットコインの革命性とビットコインによって起こる可能性を知りました。(レビュー)
そのあと2017年後半にはビットコインを含むアルトコインのバブルが起こり、一夜にして億を超える資産を手にする人が続出しました。
約1年が経過した2018年11月現在、そのバブルは冷めてビットコイン価格はピーク時の1/5程度になっています。
投機市場によって注目された仮想通貨は、ようやくその本来の価値を世の中に提供するステージを迎えます。
野口悠紀雄氏は、今後仮想通貨が起こす進化を本書で解説しています。
本書のレビューは、ここ最近の仮想通貨に関するニュースの中で、ぼくがわかりづらいと感じている点についてまとめてみます。
今回は「銀行の仮想通貨」です。
『仮想通貨はどうなるか』MUFGコイン普及のカギは他行との取引
三菱UFJ銀行の開発したMUFGコインが2019年に利用可能になると言われています。
メガバンクが発行する初の仮想通貨として大きく注目されています。
野口悠紀雄氏は、MUFGコイン普及のカギは他行の取引がどうなるかにかかっていると分析しています。
メガバンクの仮想通貨の成功のカギは送金コストであり、どれだけ広い範囲での送金に使えるかが重要だからです。
これを実現化するためには、他行も仮想通貨を発行している必要があります。
みずほファイナンシャルグループも三井住友銀行も仮想通貨を発行する計画を持っていますが、そのタイムスケジュールはまだはっきりしない状況です。
VISAやPayPalのようなグローバルフィンテック企業とのシェア争いに勝つには、野口氏が指摘するように、幅広い送金需要に応える必要があると思います。
価格安定のハードル
MUFGコインは、1コイン=1円に限りなく近いように価格安定を目指すとしています。
変動相場制を採用しながら、固定価格を目指していくのです。
固定価格制では銀行間の資金移動が必要となり、従来の預金決済と同様に、日銀ネットに依存せざるを得なくなり、現行のシステムを使うため、手数料の引き下げには限界があるかもしれません。
また固定価格にすると法的には電子マネーの扱いになるため、100万円の送金上限が適用されてしまいます。
このため完全固定ではなく価格安定を目指すとしているのです。
店頭価格を日本円に対して安定させる仮想通貨のプロジェクトはすでに存在するしています。
それはブロックチェーン推進協会が発行する仮想通貨ZENです。
ZENではコイン発行量と同額の日本円を準備することで、日本円に対する価格を安定させています。
MU FGコインについても、日本円に対する価格安定を目指すなら、準備金が必要となり、銀行の資産構成や収益性が影響を受ける可能性を排除できません。
実現すれば大きなメリット
MUFGコインの普及には上記2つのハードルがありますが、実現すれば日本経済にとって大きなメリットがあると野口氏は期待を込めて述べています。
最も期待される機能は、インターネットを通じて安い手数料で、転々と流通することです。
銀行にとっても、キャッシュレス化を進めることができ、コスト削減のメリットがあります。
まとめ
安い手数料で、インターネット上で決済できて、価格が安定していれば、決済のためにとても便利な手段となります。
ビットコインと違う点は、管理主体のあるなしと、価格の安定という2点になります。
また、銀行口座を簡単に利用できることも便利な側面であり、実現すれば決済手段として広く普及するのではないかと思います。