『仮想通貨はどうなるか』 【レビュー】51%攻撃編

野口悠紀雄氏の著書『仮想通貨はどうなるか』を読みました。

ぼくは同氏の『仮想通貨革命』を2016年9月に読み、ビットコインの革命性とビットコインによって起こる可能性を知りました。(レビュー)

そのあと2017年後半にはビットコインを含むアルトコインのバブルが起こり、一夜にして億を超える資産を手にする人が続出しました。

約1年が経過した2018年11月現在、そのバブルは冷めてビットコイン価格はピーク時の1/5程度になっています。

投機市場によって注目された仮想通貨は、ようやくその本来の価値を世の中に提供するステージを迎えます。

野口悠紀雄氏は、今後仮想通貨が起こす進化を本書で解説しています。

本書のレビューは、ここ最近の仮想通貨に関するニュースの中で、ぼくがわかりづらいと感じている点についてまとめてみます。

今回は「51%攻撃」です。

『仮想通貨はどうなるか』51%攻撃とは

51%攻撃とは、あるマイナーあるいはそのグループが、全体の51%以上の計算能力(ハッシュパワーという)を有したときに起こすことのできる悪意のあるブロックチェーンの承認です。

あるマイナーが51%以上のハッシュパワーを持つと、計算の競争に勝つ確率が高くなります。

それを利用して、自分たちに有利になるような取引を記録したブロックを作って、その後ろにハッシュパワーにものをいわせてたくさんのブロックつなげます。

具体的には、二重支払いを行って、ターゲットの取引所を別コインに換金したあとで、それより長いチェーンを承認して、取引所への送金をなかったことにするという手口です。

結果的に不正のあるブロックが承認されて、そのマイナーやグループが利益を得ることができます。

実際に起こった攻撃

2018年5月中旬にMonacoin(モナコイン)への攻撃があり、海外の取引所から1,000万円程度のモナコインが失われました。

ほぼ同時期にVergeとBitcoin Goldへの攻撃も発生しました。

今回事件が起きたコインは規模が大きくないため、ある程度の資金調達を行うことで、51%に達するハッシュパワーを得ることができます。

ビットコインの規模であれば、現実的には51%攻撃はありえないと考えられています。

対策はあるのか

51%攻撃はマイニングにPoWという手法を用いている限り起こり得る問題として、以前から予想されていました。

ただし、これまでは、理論的には有り得ても、実際にはないだろうと考えられていました。

この攻撃が実際に起こったことは、仮想通貨全体に対して、被害額の大小よりも大きな問題を提起しました。

今検討されてるのは、PoWを見直し、プルーフオブステイク(PoS)の一部または全部の採用です。

これはマイニングの条件として、保有しているコインの量を勘案する仕組みです。

しかし、PoSを採用したとしても起こりうる攻撃はあり、重要なのは攻撃によってどんな被害が出て、どうすれば被害に遭わなくてすむかを知っておくことです。

51%攻撃で行われることは、実は限られていて下記の3つです。

  1. 二重送金を行って、一方の送金を巻き戻してなかったことにすること
  2. 他人の送金の一部または全てがブロックに含まれるのを妨害すること
  3. 他人マイナーが採掘したチェーンが延長することを妨害すること

注意が必要なのは、入金をあつかう取引所や交換所、サービスを提供するWebサイトやECサイトや店舗ということになります。

コインの受け取りをしない場合は被害に遭うことはありません。

まとめ

PoWの構造的な問題である51%攻撃の実際を本書で知ることができました。

理論的に可能だが、実際には起こりえないと考えられていた51%攻撃が、実際に起ったということは、それだけ仮想通貨が社会に浸透してきているということの現れだと思います。

51%攻撃で被害を受けるのは、何らかの受け取りをした場合のみなので、一般ユーザーが直接被害に遭うことはありませんが、その中身は理解しておくことが必要だと思いました。

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