孤独を克服するがん治療【レビュー2】 がんに立ち向かうために

孤独を克服するがん治療〜患者と家族のための心の処方箋』押川勝太郎 (著) を読みました。

きっかけは、2018年11月24日に開かれた、ウェブ心理塾セミナー祭りで、押川氏のセミナーを聞いて感銘を受けたからです。(レビュー)

本書を読んで、今までぼくたちが持ってきたがんのイメージと、現在のがん治療の実体は、大きくかけ離れていることを知りました。

今回は、第2章 「がんに立ち向かうために」で印象に残った部分をまとめます。

『孤独を克服するがん治療』がん治療に前向きになれない

がん治療によって、胃の切除や、乳房の切除、子宮や前立腺の摘出、人工肛門など、体に大きな変化を起こすものがあります。

また、抗がん剤治療による副作用も問題もあります。

そんな思いをするのなら、がん治療はせずに放置しておくほうがいいのではないかと考えてしまう人もいるでしょう。

ぼくもそのように考えていたこともありました。

しかし、押川氏は、だからといってがん治療を受けないほうがいいということではないと、治療を回避することに異を唱えます。

なぜなら、がん治療は症状を緩和させ、がんを忘れるためのものだからです。

前回のレビューでも書いたとおり、がん治療=苦しいもの、というがんのブランドが浸透しすぎているのです。

押川氏は、どうしても治療に前向きになれない場合は他者の力を借りることをすすめています。

医療従事者や、実際に治療を経験した患者から直接意見を聞くのです。

相談しづらい場合には、がん相談支援センターなども活用することができます。

抗がん剤への悪いイメージ

ぼくは、以前は抗がん剤は毒であると思っており、できる限り使うべきではないと思っていました。

実際に抗がん剤は副作用がとてもつらくて、正常な細胞にも悪影響を及ぼすというイメージは幅広く浸透しています。

押川氏は、抗がん剤治療が苦しいというのは20年以上前のことであり、現在の抗がん剤治療はむしろ苦痛をやわらげるためのものであると述べています。

現在の医療では、エビデンスに基づいた治療が重要とされています。

さじ加減というようなあいまいさは排除されるようになっているのです。

抗がん剤治療でもそれが重要視されるがあまり、経験の浅い医師は、ガイドライン通りの投与量を厳守するため、患者によっては苦痛が強く現れる場合が生じていると押川氏は分析しています。

苦痛は検査ではわかりません。

だから、患者は医師、医療スタッフに対して、苦痛をはっきりと伝えなければならないと押川氏は警笛を鳴らしています。

がんの治療はがんの症状をやわらげて、がんを忘れるためのものであるはずですから、抗がん剤治療の副作用がつらいというのは本末転倒です。

抗がん剤治療を行う目的とは

抗がん剤治療による目的は患者一人一人によって異なります。

腫瘍内科医である押川氏は、抗がん剤を使う目的をわかりやすく5つのパターンとして説明しています。

ステージ3までで手術で癌を完全に取り除くことができた場合

がんの再発を防ぐために一定期間行います。

大腸癌であれば5%、乳がんであれば30%ぐらい再発率を下げることができます。

化学放射線療法に大きな効果が期待できる場合

ステージⅡ、Ⅲの食道がんなどが該当します。

化学放射線療法とは抗がん剤と放射線治療を併用することです。

完全寛解の可能性も高いといわれています。

ステージⅣだが肝転移などを含めて腫瘍を切除できそうな場合

大腸がんで考えられるケースです。

肝転移している胃がん、膵臓がんなどは再発しやすいこと、体力低下は延命を妨げることから、手術はしない方が良いと考えられます。

この場合は抗がん剤治療で腫瘍を縮小させることはできなくとも、がんと共存をはかる治療を行います。

ステージⅣでがんの症状が弱い場合

がんを治療することは難しいですが、抗がん剤治療で延命を目指すことができます。

がんと共存をはかる治療を継続します。

ステージⅣでがんの症状が強い場合

医療用麻薬を活用しつつ間接的な痛み止めとして抗がん剤を使います。

抗がん剤が効きにくいがんでも、症状緩和が結果的には延命につながる可能性もあります。

代替医療について

がんについて調べたいと思って書店に行くと、さまざまな効果の高そうなタイトルの書籍があり、惑わされます。

押川氏は、一般書店に売られている誇張の強いタイトルの書籍は、儲け話と同じからくりなので、注意すべきと警笛を鳴らします。

がんとは病名ではなく、単なる疾患ジャンルです。

原発臓器(どこで発生したがんなのか)や、組織診断、ステージによって、進行と治療は大きく異なるものなのです。

だから、「がんが〇〇で治る」や「〇〇ががんに効く」という表現はあり得ないのです。

また、免疫療法と免疫チェックポイント阻害薬は明確に違うということも、押川氏は重ねて強調しています。

免疫チェックポイント阻害薬以外の免疫療法は、効果が認められていないから自費診療になっています。

日本は諸外国に比べて健康保険制度が充実していて、標準治療に多額の費用がかからないようになっているため、財産に余裕のある患者がターゲットになっている構図があると、押川氏は分析しています。

まとめ

ぼくは、がん治療は、苦しくて、見返りの少ないものだと思い込んでいましたが、本書を読んで、現状はそうではなくなっているということを知り、安心しました。

日本人の2人に1人はがんになるので、自分や、家族、知人ががんになることを考えて、正しい治療法をがんになる前から勉強しておくことが大切だと感じました。

特に、根拠の乏しい代替医療の情報には十分気をつける必要があると思います。

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