『孤独を克服するがん治療〜患者と家族のための心の処方箋』押川勝太郎 (著) を読みました。
きっかけは、2018年11月24日に開かれた、ウェブ心理塾セミナー祭りで、押川氏のセミナーを聞いて感銘を受けたからです。(レビュー)
本書を読んで、今までぼくたちが持ってきたがんのイメージと、現在のがん治療の実体は、大きくかけ離れていることを知りました。
まずは、がんのイメージと実体に関して知ったことをまとめてみます。
がんのブランド化
がんはドラマや映画では、悲劇の病として扱われ、がんにかかることは、やがて死ぬことを意味します。
これが、多くの人にすり込まれたがんのイメージです。
がんをこのようにブランド化することで、映画、ドラマは多くの人に観られ、様々な書籍が販売部数を伸ばします。
医療の分野では、臨床試験データに基づいたガイドラインが定められています。
つまり、ある程度の数のデータによって証明されていない治療法は採用されないのです。
書籍の場合はそれがなく、無法地帯です。
本という体裁によって、説得力をもって、根拠の乏しい療法が正しいと誤解してしまうことが多いから注意すべきと、押川氏は警笛を鳴らしています。
がんは共存していく病気
今や1/2の人ががんにかかるというのに、がんのイメージはまったく変わっていません。
現在のがんの実体は、決して死ぬ病ではありません。
またがんの部位によって、その後の経過がまったく違うのです。
生存率については、国立がん研究センターからデータが公表されております。
このグラフは男性のデータですか、5年生存率が50%を上回っているものが大半です。
現在のがん治療の実体は、がんと共存しながら、いかに生活の質を保っていけるかということが中心なのです。
かんの告知を受ける心構え
1/2ががんにかかるのですから、すべての人が自分ががんと診断される準備をしておくべきです。
押川氏は、自らががん告知をしてきた立場から、以下の対策をすすめています。
最初は聞き慣れない領域の説明がよくわからないのは当然のことだからです。
・家族の数人で話を聞いて聞きもれ、理解不十分な部分を補う
・説明を録音させてもらい、繰り返し聞く
・治療選択時など、再度追加の説明がある時までに、前回説明を受けたキーワードをネットや書籍で調べ、疑問点をメモして説明前に主治医へ渡しておく
余命とは
押川氏によると、生存期間中央値を余命として説明する病院が多いそうです。
生存期間中央値とは、そのがんになった人が100人いたとして、50番目になくなった人の生存期間のことです。
あくまで中央値なので、それより長く生きる人も短く生きる人も50%ずついて、その期間はさまざまです。
これは生存曲線のグラフを見ればより細かく理解できます。
ステージⅣのがんとは
ステージⅣのがんとは、がんが発生した部位から、別の場所に飛び火して発生した状態のことです。
がんとは腫瘍です。
腫瘍とはイボやほくろと同じものです。
それ自体は何ら悪さをすることはありませんが、大きくなると部位によっては、他の臓器を圧迫します。
ですから、標準的な治療としては切除になります。
ステージⅣでは、飛び火していますから、切除して取りきることはできなくなります。
手術をして体力が低下してしまうと、飛び火したがんが大きくなりやすくなるので、手術以外の方法も選択肢に入ってきます。
がんの問題は大きくなることで、周囲を圧迫することですので、大きくならなけれは症状は悪化しないし生命の危機も迫ってきません。
抗がん剤治療を行うことで、がんを消失させなくても、大きくなることを防いで症状を安定させることができます。
ステージⅣイコール末期がんではありません。
国立がん研究センターのデータでは、部位によってはステージⅣでも5年生存率が50%以上の場合もあります。
ステージⅣは、がんの消失は難しくても、がんとの共存は可能な状態なのです。
まとめ
押川氏のセミナーを聞いて驚いたのは、日本人の2人に1人ががんにかかるという事実です。
これは自分もかかる可能性があるから準備しなければと思うようになりました。
今まではがんにならないように気をつけようと考えていましたが、検診で防げるがんは限られており、食事とがんの関連も決定づけるデータは揃っていません。
であれば、がんと診断されたらどうするかを事前に準備しておくことの方がより現実的だと思いました。
本書には、どのようにがんと共存していくべきかが詳しく書かれているので、引き続きレビューしていきます。