2016世界卓球クアラルンプール大会で日本のエースとして活躍してきた水谷隼選手の2刊目の本『負ける人は無駄な練習をする』が発売されたので早速読了した。
水谷選手は過去10年間で全日本選手権を8回優勝しており、負けた2回も準優勝と、圧倒的な勝負強さを誇る選手だ。
水谷選手は中学生の頃からドイツのプロチームに所属していた経歴もあり、従来の日本の選手とは違いグローバルスタンダード的な考え方をする選手である。
この本はアスリートが勝つために日頃の練習をいかに効率的に実施するかを書いた本だが、そのままビジネスの世界にも通ずる考え方が散りばめられている。
いくかかの気になったフレーズを紹介したい。
練習中にすみませんというのをやめよう
グローバルでは練習相手は同等の立場なのに、日本では先輩や、自分より強い人と練習する時にミスをしたら謝る習慣がある。水谷選手自身も謝られることが非常に多く、言われるたびにイライラすると述べている。
ミスしたとしても生きたボールを打つ事が相手の練習のためになると水谷選手は考える。
ビジネスの世界に置き換えると、お互いが自分の主張は言い合った方が良い成果が出るという事と同じ事だ。
「頑張った感」を作る日本の練習は「練習のための練習」
日本では体力を多く必要とする反復練習が多い。
それは指導者も選手も「頑張った感」を求めているからだろうと水谷選手は述べる。
普通の選手は「ただ頑張るだけの練習をする」。強くなる選手は「一本一本考えながらやる練習」をする。同じ練習でも効果は全く違うものになる。
水谷選手が幼少時代に通っていた浜松の練習場の人に水谷選手の事を聞く機会があったが、その頃からオンオフの切り替えの上手な選手だったそうだ。
大舞台で勝つのは異常なまでに自信を持ち、執念を持つ選手
水谷選手は小さい頃に自分の異常性に気付き、敢えてそれを伸ばしていくように意識したと述べている。
異常性とは、いわゆる「異常な執念」。
それは練習でも一本一本、執念を持って打球することだ。
試合での異常性とは、いわゆる「ゾーン」に入り、周りが見えなくなる状況を作れる人を意味する。
ビジネスの世界でも異常な努力をする人は、その仕事が好きだから異常な執念を持ってゾーン状態にはまるのだと思う。
人間力は関係ない
日本の指導者は「人間力が重要」「人間力を鍛えろ」と選手によく言う。
しかし私は全く理解できないと水谷選手は述べる。
「卓球を通して一流の人間になれ」という言葉は一番嫌いなフレーズだとも。
チャンピオンという人種は人を蹴落としてでも頂点に立ちたいという強烈な自我を持った人たちなのだ。
勝負に勝ち続けるとはこういうことなのだろう。
スボーツではルールという共通の枠組みがあるので、異常性を極める事ができる。
名選手は名コーチではない
コーチと選手は別物だ。
ところが日本ではコーチになったらそれで終わりという雰囲気がある。
卓球でもテニスやゴルフと同様に専任のコーチと契約する選手がいる。
水谷選手、福原選手、石川選手である。
コーチの重要性はビジネスの世界と同様にますます高まっている。
リードしている時こそアドバイスが必要
日本の場合は「ゲームを取った」「ゲームを落とした」というゲームの勝ち負けで、ベンチにいるコーチが判断してしまうケースが多い。
相手も常に対策を講じてくるのだから常に先を読んだ戦略が必要になる。これはビジネスの世界でも同じだ。
まとめ
水谷選手の勝つための究極の考えを臆することなく語った貴重な情報の詰まった本だ。
従来の日本流の指導方法にはない、斬新な考えや意見が随所に散りばめられている。
日本卓球界を一人で引っ張ってきた水谷選手だからこそ語ることのできる重みのある内容である。