『新しい時代のお金の教科書』 山口 揚平 (著) を読みました。
今話題の、『お金2.0 』が描く未来を、違った切り口で、さらに先の未来も含め、広範囲に紹介している本です。
この書評を書く前に、著者の山口揚平氏のお金に関する前作『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったか?』と『そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか』を読み、書評にまとめました。
『なぜゴッホ…』では、個人が「信用」を高めるための信用方程式を学びました。そして『そろそろ会社辞めようかな…』では、「価値」をお金に換えるための、5つの「システム」を学びました。
本書では、きたるべき、時間主義経済、記帳主義経済、信用主義経済について学びました。
やはり、「信用」を高めていくことこそが、これからくる新しい「お金」の時代に必要な生き方であることを理解しました。
『新しい時代のお金の教科書』「お金」の起源は「記帳」である
「お金」の始まりは、物々交換を簡略化するために生まれたとされていますが、それはウソであると、著者は述べています。
最近の研究では、お金の始まりは、貸借の記録を書いた、動かすことのできない巨大な石だと言われています。
「お金」の起源とは、物々交換ではなく、あげたモノ、もらったモノの価値や、数量を記録しておくという、「記帳」なのです。
その「記帳」を信用することで、今現物の価値ある資産がなくても、取引が可能となります。
考えてみれば、僕たちが普段使っている銀行口座は、通帳に記された単なる数字ですが、貨幣が手元になくても、銀行の記帳をみんなが正しいと信じること、つまり「信用」に基づいて、買い物ができます。
今注目されているビットコインを始めとした仮想通貨も、ブロックチェーンと言われる記帳(分散型台帳システム)で成り立っています。ブロックチェーンは、管理者がいなくても「記帳」に改ざんが加えられない、自動化されたシステムです。
銀行のような管理者を「信用」する必要がないというのが、ブロックチェーンの画期的発明と言われるゆえんです。
「お金」とは何か?
「お金」とは、先ほどの「記帳」に基づいた「信用」を、譲渡可能にしたものです。
「お金」の価値は、「信用」の高さと、「汎用性」によって決まります。誰でもが扱いやすい形にすることで、流動性が高まり、取引の量が増えていきます。
「お金」の発明によって、人間は分業と取引を可能にし、社会を飛躍的に発展させてきました。
国家から個人へ
現在流通している「お金」は、国家の信認を得て中央銀行が発行した、譲渡可能な「信用」です。
しかし、これからは暗号通過の技術により、個人が譲渡可能な「信用」を発行できるようになります。それらは「トークン」とも呼ばれています。
モノからコトへ
「お金」はモノを流通させる手段として発展してきました。
モノは、人が生きていくために必要な、衣食住に関わる消費財が中心でした。
しかし、これからは生きていくために必要な消費財は、水と同じように、インフラ化し、「お金」を使わずとも手に入るようになっていくと、著者は述べています。
実際に、今、先進国に住む人の欲求は、生存欲求(モノ)から、社会的欲求(コト)へと急激にシフトしていると、著者は解説します。
社会的欲求とは、承認欲求、所属欲求です。
今起ころうとしている変化は、人々が欲しがるものが、お金では直接変えない、承認へと移ってきているということなのです。
資本主義の次に来る新しい経済、時間主義と記帳主義
資本主義とは、生存欲求を満たす(モノ)を、信用を外部化した「お金」でやり取りするというシステムで、すべてモノの頂点に「お金」が存在しました。
これから、人々のモノへの欲求はどんどん薄れて、社会的欲求を満たす(コト)をやり取りする経済が発展します。その経済の元になるのが、「時間」であると著者は解説します。「時間」も「お金」と同じように数字で表されますが、「お金」と違って、状況による伸縮性があり、所有するその人に強く紐付いた資産です。
記帳主義経済ではモノとコトのやり取りを、「お金」を介さずに記帳していきます。今までは記帳した対象は「お金」だけだったのが、あらゆるモノとコトが可視化され、記帳されていくのです。
時間主義では、その個人を最大限に活かすための「健康」、記帳主義では「信用」がもっとも重要な要素になります。
著者は、最終的に「お金」が不要になる、信用主義の到来を予測しています。
『新しい時代のお金の教科書』まとめ
本書を読んで、現在流通している「お金」の起源と、その本質の理解が深まりました。
そして、資本主義のあとにくる、時間主義、記帳主義とは、読んで概要はわかったものの、まだまだ実感がわいていません。
今後も、さまざまな書籍から情報を得て、考察を深めていこうと思います。