なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか? 山口 揚平  (著) 【レビュー】

山口 揚平さんの『 なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか? 』を読みました。

最近、佐藤航陽さんの『お金2.0』を読んで、「お金」とは何か、そして「お金」の将来について、考えることができました。

その流れで、山口 揚平さんの『新しい時代のお金の教科書』 を読んでみました。佐藤航陽さんとは違う切り口ですが、同じ方向性が書かれていました。

『新しい時代のお金の教科書』のあとがきには、本書は『 なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか? 』の続編です、と書かれていました。

以前にその本を読んだことがあったことを思い出しました。内容はほとんど記憶に残っていなかったので、『新しい時代のお金の教科書』と関連性を意識しながら、もう一度読んでみることにしました。

この本で学んだ、お金のピラミッドと、信用の方程式について、まとめます。

『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』 お金のピラミッド

「お金」の下には「価値」と「信用」がある

堀江貴文氏は、かなり昔から、「お金は信用を数値化したもの」と語っています。だから、積み上げるべきは「信用」であって「お金」ではないのだと。僕は、その言葉はずっと頭に刻んでいるものの、意味はわかっていませんでした。

特に、「信用」とは何なのか、それが一番の疑問でした。

著者は、「お金とは価値の結果であると共に信用を数量化したものである」と述べています。堀江氏とほぼ同じ表現で、「お金」を言い表しています。

「お金」が「価値の結果である」ことは、僕にもわかります。「信用」とは何なのか、著者は、これを「お金」のピラミッドという図を用いて解説しています。

このピラミッドではお金は、「価値」と「信用」からできています。

「価値」を「お金」に換えることを「お金を稼ぐ(マネタイズ)」といい、「信用」を「お金」に換えることを「お金を創る(キャピタライズ)」といいます。

「価値」を「お金」に換える

「価値」を「お金」に換える(マネタイズ)ためのとっかかりは「好き」を追求すること、と著者は強調します。そのことで自分に与えられたミッションがみえてくるのです。

「好き」なことととは、言い換えると「やりたい」ことです。「好き」なことも、「やりたい」こともないという人も少なからずいるでしょう。その人たちには「やるべき」ことをやろうと、著者は呼びかけています。

それが仕事でなくても、お金にならなくてもいいのです。積み上げていった先に、ミッションを授かるときが必ず訪れると著者は強調します。

お金のピラミッドでは、「価値」の下には「使命(ミッション)」があります。「価値」の下のピラミッドのもうひとつの要素は「覚悟(コミットメント)」です。「使命」と「覚悟」が結びついて「価値」となります。

著者は、「価値」を「お金」に換える、すなわち「お金」を稼ぐために一番大切なことは、「使命」から始めることだ、と強調します。

「信用」を「お金」に換える

「価値」と「価格」は常に乖離しているのが現実の世の中です。

著者は「お金」が「お金」を生む世界に疑問を感じ、「価値」を「お金」に換える活動を行ってきましたが、「価値」と「価格」の差は歴然として存在することを身をもって知ったと述べています。

「価値」と「価格」の差が、「信用」といえます。現在の「お金」に対する信用は国家が創っています。その信用は、財務省、金融庁、都銀、大企業、中小企業と、日本では統制されて、上流から下流へ流れていきます。著者は起業したての頃、自らの信用が1/10くらいになったのを感じたそうです。

「国家」が信用の源なので、あらゆる会社、人たちは、「国家」のお墨付きを得ようとして活動します。それによって「価格」を高めていくのです。

しかし、著者は、今その「国家」が弱体化しているといいます。その一方で力を持った起業や個人が持つ「信用」が可視化されて、「お金」を創ることができる社会がやってくると述べています。

すでにグローバル企業は、「国家」が担っていた公共を行えるようになってきています。そうすれば、独自の通貨を発行することは明らかです。すでにグローバル企業は、小国のGDPをはるかに超える売上があり、それらの小国の信用を上回っています。グローバル企業の発行する通貨の方が、一部の「国家」の発行する通貨より「信用」が高いという状況がどんどん出てきているのです。

また個人においては、インターネット上で一人一人の「信用」が可視化されていきます。著者はそれを、「僕たちはみな上場している」と表現しています。上場しているということは、「株価」がついており、「お金」に換えることができるのです。

「お金」の発行の覇権が、「国家」から、企業、個人へと移りつつあるのです。そのような時代では資本主義の概念は通用しなくなります。著者は、資本主義の次にくる社会を、信用主義と表現しています。

現在、ありとあらゆる価値やモノがインターネット上ですぐ見つかるため、互いに必要としているものを瞬時にマッチングさせることができます。そして、信用主義の世の中では、互いの「信用」が保全されていれば、「お金」を使わずとも取引ができるようになるのです。個人は「信用」を、あたかも「お金」のように、貯めて、必要なときに引き出して使っていくのです。

『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』 信用の方程式

「お金」のピラミッドでは、「信用」の下には、「信念」(プリンシプル)があります。「信用」とは一貫した行動から生まれます。それが、周りへの安心感、共感、親近感につながります。堂々と発信して行動していくなかでは、その場の空気を乱すことも出てきます。それを貫くためには確かな信念が必要です。

著者は、デービッド・マイスターの共著『プロフェッショナルアドバイザー 信頼を勝ち取る方程式』の中で、取り上げられた次の信用の方程式を紹介しています。

信用度=(専門性+確実度+親密度)/利己心

何よりも利己心(エゴ)を減じていくことが大きな影響を与えるというのです。

素人目には専門性を高めることが信用を高めるための重要なポイントと考えますが、そうではありません。利己心を1/2にすれば、信用は2倍になるのです。

数式で表されているので、日々の自分の行動を測定するのに有用です。

『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』まとめ

本書を読んで、「信用」の意味がようやくわかってきました。そして、その「信用」は、テクノロジーの進化によって、嫌が応でも、どんどん可視化されていきます。これからは一人一人の「信用」で経済はまわっていくのです。

これからは、「お金」よりも、「信用」を意識して毎日を生きていきたいと思います。