卓球の鬼と呼ばれて。 平野 早矢香 (著) 【レビュー】

『卓球の鬼と呼ばれて。』 平野 早矢香 (著) を読みました。

平野早矢香選手と聞いて思い浮かべるのは、どんなに劣勢の場面でもあきらめずに必死で戦う姿と、団体戦の負けられない場面での数々の大逆転のシーンです。

圧倒的なエースボールや、個性的なテクニックを目立たせることはないけれども、試合での安定感は抜群で、団体戦にはかかせない選手でした。

最近テレビでのコメンテーターとしての活躍されていて、プレゼンがすごくうまいです。

平野早矢香さんのプレゼン: 卓球の”生きた球、死んだ球” Part 1/3

そんな平野早矢香さんの本が出たので、さっそく読んでみました。

卓球の上達についてとても参考になると同時に、成功哲学やメンタルについて書かれた自己啓発本だと感じました。

特に印象に残った3点についてまとめます。

卓球の鬼と呼ばれて。 なぜ勝負強いのか

平野さんは、自身がギリギリの勝負で勝っているイメージがあるから「勝負強い」と見えたのでしょうと述べています。

逆の言い方をすれば、圧勝できる強さがなかったから、ギリギリの局面まで持ち込んで、相手にプレッシャーをかけていく戦い方しかできなかったと、自身の戦い方を評しています。

平野さんは小さい頃から、逆転勝ちや、人の印象に残る試合をすることが多かったそうです。

土壇場で開き直れるタイプだったようです。

開き直りというのは、思い切って積極的に攻めていくことだけでなく、徹底的に粘り倒すということもできたそうです。

これしかないと腹を決めたら、それに集中することかできるタイプだったのでしょう。

平野さんは練習より試合の方がいいプレーができると、コーチから言われていたそうです。

練習のときから、10−10のジュースで打てるかどうかを考えて、こだわりを持って打っていたといいます。

平野さんは、試合では意味のあるボールを打たなければならないと強調しています。

試合で意味のあるボールを打つために、練習での意識が大切なのです。

平野さんの目標達成の方法

平野さんは、自分が立てた目標を達成することを原動力にして努力してきたと述べています。

それは卓球だけではなく、引退してからも変わらないことだそうです。

目標をノートに書いて、それに向けてがんばって結果を出して、自信をつけるという繰り返しを行っているそうです。

そして、目標設定の仕方が大切だと強調しています。一生懸命がんばって届くか届かないくらいの目標を次々に設定していく、と述べています。

不調なときは、小さな目標を設定して、それに集中していくと、落ち込んでいる気分も変わっていくそうです。

そして、試合の中でも同じように、次の一本をどうやって取ろうかということに集中していくと、不安やネガティブな気持ちから解放されると述べています。

平野さんは、集中に入りやすい性質をもっていたようです。ひとつのことに集中すると周りがみえなくなると、自分を表現しています。

目標設定のしかたが優れていること、すぐに集中してフロー状態に入れること、この2点が平野さんが成功できた理由ではないかと思いました。

平野さんが日本一になれた理由 2つ

ボールを打ち合っていない時間を制する

平野さんは、「これといった武器のない私が日本一になれた理由」として2つの極意を解説しています。

1つめはボールを打ち合っていない時間を制すること、2つめは後の先(ごのせん)です。

卓球競技においてボールを打ち合っている時間は、わずか19%だそうです。

つまり、80%はボールを打っていない時間なのです。

しかも卓球は相手との距離が近く、お互いの表情、雰囲気が卓球台を挟んで伝わります。平野さんは、プレーの合間の相手の表情、しぐさからものすごくたくさんの情報を収集して、相手の心理を読んでいました。

相手の「しぐさ」には、代表的には、「素振り」、「うなづき」、「振り返り」の3つがあります。

僕は今まで相手選手の素振りについて、注視したことはありませんでした。

平野さんは、相手がミスしたときにする素振りが、入らないようなスイングであれば、もう一度同じボールを送り、コースを変えるようなスイングであればそのコースを待つ、というような戦術をたてていたそうです。

相手がベンチを振り返ったときには、ベンチコーチの表情からも、選手の心理を読んでいたそうです。

これからは、他人の試合を見るときに、「しぐさ」について注視するようにしてみたいと思いました。

後の先(ごのせん)

後の先とは、「相手のやりたいことをあえてやらせる」戦術です。

平野さんは、相手が待っているコースにあえて送って、打たせる戦術をとっていたそうです。

ただし、1球1球に微妙な変化をつけて、相手にミスをさせるように仕向けるのです。

それによって、相手は、気持ちよく攻めているのになぜか得点にならないという展開におちいっていきます。

僕にも、気持ちよく攻めさせてくれるのになぜか勝てないという相手がいます。

そのようにして負ける試合はとても悔しく、大きく落ち込みます。

「後の先」の戦術にまんまとはまっていたと、この箇所を読んで強く自覚しました。

卓球は、ゴルフとは違い、相手のボールの力を利用して返球できる球技です。

自分に力のあるボールがなくても、相手のスピードや回転を利用することによって、相手にミスをさせることができます。

自分の打法や、自分の球質だけにこだわるのではなく、相手のボールをいかに利用するかというのは、卓球という競技では特に重要な視点だとあらためて感じました。

卓球の鬼と呼ばれて。 まとめ

平野さんの卓球に対する考え方、戦術は、僕のように年代別で競技をするプレーヤーにとってとても参考になりました。

高い身体能力や技術がなくても、試合を制する戦術があることを知りました。

また、小さな目標を設定して、それに集中していくやり方は、ビジネスや人生で使える大事な考え方です。

平野さんがテレビで卓球の解説をするときは、この本を読んでから聞くと、さらに試合の流れを読むことができるようになると思います。

卓球の鬼と呼ばれて。

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