前野隆司著『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』を読みました。
幸せのメカニズムというタイトルにあるように、そもそも幸せとはどういう状態のときに感じるものなのかを、統計的に明らかにしたのが本書です。
幸せのメカニズムを知ることによって、生き方に対する指針がはっきりして、迷いや不安が少なくなります。
幸せの感覚は人それぞれでしょう。
夢や目標を達成することで幸せを感じることも人もいれば、何もない平穏な状態を幸せと感じる人もいます。同じ人の中でも、幸せを感じる場面はその時々で違いがあります。
幸せを感じるのは、どういう状態なのかということは、今までははっきりとわかっていなかったといえます。
前野隆司氏は、現代の1500人の日本人のアンケートから、主観的に幸せだと感じるための四つの因子を導き出しました。
幸せを感じる要因をシンプルに表したことで、私たちはより具体的に幸せを目指すことができるようになりました。
幸せの測り方
幸せとは、主観的な感情です。
いくら他人が羨むような環境に恵まれていても、本人が幸せと感じていなければ、幸せとはいえません。
本書では、主観的な幸福感を、統計的に見ていこうという手法を取っています。
幸せという感情に影響する要因はたくさんあります。
このアンケートの特徴は、心的な要因のみを対象としているところです。
心的な要因以外の、外的な要因は自分でコントロールできない場合がたくさんあることと、地位財であることが多いからです。
アンケートの内容は、幸せに影響することがすでにわかっている心的要因をピックアップしました。29項目について3つづつ計87個の質問に、当てはまるかどうかの度合いを7段階で答えるというものです。
これを日本人1,500人を対象に行いました。
地位財と非地位財
地位財 (positional goods)とは、経済学者のロバート・フランクが作った言葉です。金、モノ、地位などの有形な財産であり、周囲との比較によって満足を得るものです。
一方、非地位財(non-positional goods)は、健康、自由、人間関係など無形の財産です。非地位材は、他人が持っているかどうかとは関係なく喜びが得られます。
幸せの四因子とは
前野隆司氏の研究グループでは、この1,500人のアンケート結果を「因子分析」という手法で、コンピュータソフトを用いて解析し、その結果四つの、お互いに独立した因子に分解できたのです。
ソフトが算出した結果は、四つの分類だけです。
研究グループは、それぞれの分類にユニークでわかりやすい名前をつけました。
それが「幸せの四因子」です。
第一因子「やってみよう」
自己実現と成長の因子です。
有能で、社会の要請に応え、成長に満ちていて、自己実現しているとです内容です。
やはり、目標を持って、そのために学習、成長しようとすることは、幸せに寄与するということがわかりました。
第二因子「ありがとう」
つながりと感謝の因子です。人を喜ばせる、愛情、感謝、親切と、他者との心の通う関係に関する内容です。
第一因子が自分の変化、成長(新規性)を求める因子だったのに対し、これは周りとの安定した関係(親近性)を目指す因子だともいえます。
第三因子「なんとかなる」
第一、第二とは趣向が変わって、前向きさと楽観性の因子です。
気持ちの切り替えがうまく、自己受容ができて、積極的な他者関係を維持することができるという内容です。
第四因子「あなたらしく」
独立とマイペースの因子です。
他人と比較しない、外部の制約のなさ、信念の明確さに関する内容です。
地位財を求めてしまうことを抑える意味でも重要な因子です。
幸福学の有用性
幸せを求める分野として、宗教、哲学、心理学があります。
幸福学がこれらと一線を画すのは、実際の日本人のアンケート結果をもとにしているというところです。哲学も宗教も、ある一部の人の考えをもとにしたトップダウン的な教えです。ポジティブ心理学にしても、ある研究者の経験や理論がもとになっています。
そしてなによりも四つしかないということは、わかりやすくて覚えやすいです。
私も何かに迷ったときはすぐにこの四因子を思い出すことができます。
アンケート結果をもとにしているから、そのときの世相の影響を受けていることは間違いありません。
しかし、前野隆司氏は、数十年単位では普遍であろうと太鼓判を推しています。
まとめ
幸せの四因子を知ることで、いままであいまいだった幸せになるための指針が得られるようになりました。
人生に迷ったとき、自分の方向性を見失いそうなとき、そんなときにすぐに思い出せるフレーズにまとめられているので、実践しやすいです。