『サブリミナル・マインド』下條信輔 著 第一講 レビュー 自分はもう一人の他人である

第一章のレビューです。

本章を読んで、自分の感情は、自分の内側から湧き出るものだというのは、どうやら思い込みのようだとわかりました。

感情とは、自分で自分を観察し、推測して生み出した、ラベルづけなのです。

私たちは、他人が私を推測するのと同じように、私の外側に現れた言動をもとにして、ラベルづけを行っています。

そして、その感情のラベルづけは、無自覚的に行われているので、自分の内側から湧き出たと錯覚しているようなのです。

第一講 自分はもう一人の他人である -自己と他者の社会認知心理学-

わずかな報酬の方がかえって仕事そのものの魅力を増す

下條信輔氏は、「1ドルの報酬実験」を紹介しています。

被験者の役割は以下です。

  • 単調で退屈な仕事をさせられ、その後に別の被験者に同じ作業をしてもらう。
  • 後に作業を行う被験者に、作業についての予測を与えるために、その作業が楽しかったと伝える。
  • 報酬として、1ドルまたは20ドルをもらう。

この実験が終わった後、被験者に作業のおもしろさの評定を聞きました。

結果は、1ドルの報酬をもらった被験者群の方が、作業をおもしろいと評価しました。

不十分な正当化の効果

この実験の結果のように、わずかな報酬のほうがかえって仕事そのものの魅力を増すのは 「不十分な正当化の効果」と呼ばれています。

この実験では、1ドルがつまらない作業を正当化するには十分ではなかったので、その分を補おうとするかのように態度の変化が生じたといえます。

逆に言えば、報酬の高い作業は、報酬のためにやっていると思いがちになり、作業そのものの魅力を失います。

このことは、絵を描いていた子供に、ごほうびをあげると絵を描かなくなるという、有名な実験結果でも示されています。

他者による推測と、自己による推測は同じ

心理学者のベムは、この「1ドルの報酬実験」を再現した録音テープを作り、他人をどの程度正確に判断できるかを調べる実験」として実施しました。

再現テープには、報酬条件を伝えられる部分も入っています。

結果は、元の実験と酷似していました。

このことから、他者による推測も、自己判断も,ともに、「作業がおもしろい」という発言と、報酬の額を手がかりとした、一種の「推測」の結果であるということを導き出しています。

つまり、自分の態度や感情を推測する過程と、他人の態度や感情を推測する過程とが、本質的に同じであるとしたのです。

これが「自己知覚理論」です。

ベムはスキナーの「徹底的行動主義」を受けついだと言われています。

その基本哲学は以下です。

「本人にしかわからない私的な刺激に左右されると思われている自己記述も、実は他者が知ることができる顕在的・公共的な事象に起源を発している」

自分の心ほど気づきにくいものはない

シャクターたちが提唱した、感情的な体験(ハイになる、落ち込む、うれしい、悲しい、怒るなど)に関しての考え方は以下です。

「感情的な体験に関する内的な手がかりは案外乏しく、より一般的な生理的興奮だけが知覚される」

そこで人は、この状態を評価したいという欲求から、状況に関する認知(外的手がかり)にもとづいて、多くの場合無意識的に原因を推定します。

つまり自分のさまざまな生理的状態にラベルづけをし、合理的な解釈を与える、それによってはじめて、体験される感情の方向が決定されるというのです。

元来もっとも直接的で個人的であると思われる内的経験ですら、実は自分自身に対する(あたかも他人に対するような)推測過程にもとづいていて、しかもその過程は無自覚的と考えるわけです。

まとめ

自分の感情とは、内側からくるものだと思っていました。

ところが、それは、自分の外側にある手がかりから、推測を行った結果であるとわかりました。

そして、その推測は、他人が行うのと何ら差はないのです。

また、その推測は無自覚的に行われていることで、普段はこのメカニズムには気づかないのです。

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