『酔いがさめたら、うちに帰ろう』を読みました。
最近知人がアルコール依存症で入院しました。
その知人が退院後に、おすすめしていた映画が『酔いがさめたら、うちに帰ろう』 です。
その映画はまだ見ていませんが、原作を読みました。
本書を読んで、アルコール依存症という、世の中に理解されづらい病気の実態のリアルを知ることができました。
アルコール依存というのは、単なる悪習慣といったものではなく「病気」です。
アルコールは薬物とは違って、誰もが日常的に入手、飲用できるものだけに、なぜ病気になってしまうか想像するのはは難しいことです。
著者が、その病気と闘うでもなく、ある意味受け入れながら、自分を客観的に軽いタッチで表現する文体に自然と引き込まれました。
家族に素面で会いたいと願う気持ちと、それがかなわない著者の葛藤が心にひびきました。
アルコール依存症という病気『酔いがさめたら、うちに帰ろう』
アルコール依存症というのは理解されづらい病気です。
ぼくは、お酒を飲むのは好きでよく飲みに行きますが、飲みすぎた翌日は気持ち悪くて飲みたくなくなりますし、一人のときはたくさんは飲めません。
幸いに、アルコールには依存症になりにくい体質なのだろうと思います。
しかし、アルコール依存症になると、体が悲鳴をあげたり、生活に支障をきたしても、飲み続けてしまうのです。
なぜそこまでして飲み続けるのか、依存症ではない人には理解しづらいことです。
だから病気であり、治療が必要になります。
著者の場合は、10回もの吐血をした経験がありながら、朝から飲み続けました。
著者が入院した病棟で、覚せい剤とアルコールの両方の依存症の患者は、「アル中ってのは、シャブと同じようなもんだ、違法か合法かっていうくらいの違いしかねえんじゃないか」と著者に語りました。
覚せい剤は普通には手に入らないものです。
しかしアルコールは、いつでも簡単に手に入ります。
そのことが、アルコール依存症の入り口を広くしています。
問題は、依存症で入院しても、スリップ(再飲酒の意味)を繰り返してしまう人がかなり多いことです。
アルコール病棟の患者たちの遍歴
アルコール病棟で回復をしていくと、患者たちは自助グループに参加するようになります。
そして退院が近くなってきたころ、参加者の前で、いかにして自分がアルコール依存症になったかを発表するというプログラムがあります。
最終章「アル中たちのブルース」で、 著者は、自身を含めた2名のストーリーを紹介しました。
それぞれ酒を飲み始めるきっかけの裏には、壮絶な体験がありました。
この章は途中で読むのを止めることはできませんでした。
まとめ
お酒は少量であればたくさんのいい効果があります。
しかし、人によっては少量でやめることができなくなるという危険性も潜んでいます。
世の中には、アルコールだけでなく、薬物、ギャンブル、ゲームなど、様々な依存を生み出すものがあります。
本書を読んで、依存症とは、他の病気と同じように本人の意志とは関係なく発症してしまうものだとわかりました。
他の病気と違うところは、体だけでなく、精神にも多くの影響を与えることで、社会生活がしづらくなることです。
今後、医療以外に、社会としてどんな対策を強化していくべきなのでしょうか。
深く考えさせられる課題です。