『健康の結論』堀江貴文著 【レビュー】 むだ死にしないためにできることがある

堀江貴文さんの著書『健康の結論』を読みました。

2017年のがん死亡者は37万人で、がん罹患は101万例となっています。

高齢化に伴って、がんで死ぬ人は増加しています。

しかし、医療の進歩に伴い、年齢調整後のがんの死亡は1990年代半ばをピークに減少しています。

医療が進歩したとはいえ、進行したがんを治療できる技術はまだありません。

しかし、がんの対策の以下の3つの技術は、かなり整ってきています。

  1. 早期のがんを診断する技術
  2. 早期のがんを治療する技術
  3. がんにならないようにする技術

この3つを多くの国民に対してうまく稼働させれば、ムダに早く死んだり、長期の療養を減らすことができます。これによって、日本の生産性は向上し、医療費も縮小させることができていいことずくめです。

しかし、最新医学の常識であるこの3つの技術については、まだまだ一般国民に正しく知れ渡っていません。

がんは病院では治らないと危機感をあおるような情報や、医学的根拠に乏しい、健康食品や、サプリメント、民間健康法などの情報が蔓延していて、科学的根拠と再現性のある本当に効果がある情報が隠されてしまっています。

堀江貴文氏のような発信力、影響力のある人が、まだ知れ渡っていない常識を広めるというのはすごく意義のある試みだと思います。

本書で大事だと思った点をまとめます。

『健康の結論』大腸がんは勝ち目のあるがん

予防医学の用語で1次予防、2次予防という言葉があります。

1次予防とはその病気にならないようにすること、2次予防とは早く発見して、その病気で死なないようにすることです。

1次予防には、禁煙や、運動、アルコールを控えるなどの方法があります。

大腸がんはにはすぐれた2次予防の方法があります。

それは便潜血検査です。

便潜血検査を行うことで、早期がんと、がんに変化する可能性のあるポリープを見つけることができます。

便潜血で陽性なら、大腸内視鏡検査で検査し、ポリープが見つかれば、その場で摘出ができます。

大腸がん予防の専門家である、石川秀樹氏は、大腸がんは早期であれば、90%は治る、「勝ち目のあるがん」と称しています。

40歳を過ぎたら毎年1回便潜血検査を受ける、というのが勝ち目のあるがんである大腸がんでムダ死にしない方法です。

壮大な社会実験をしている子宮頸がん

子宮頸がんの原因ウィルスであるHPVは、性交渉した男女の多くが一生に一度は感染すると言われています。

HPVに対するワクチンを性交する前の年齢で接種しておくことで、子宮頸がんリスクを70%下げられます。

HPVは、男性においても、陰茎がん、肛門がん、尖圭コンジローマを引き起こすとされており、アメリカ、カナダでは、男性の接種も推奨されています。

堀江貴文氏は、自費でワクチンを接種したそうです。

日本ではHPVワクチンの副反応問題が大きくなり、HPVワクチンについては積極的推奨を中止しました。

これにより、接種率は70%から1%未満に下がりました。

世界では53カ国がHPVワクチンを積極的に推進しており、早くから取り組んでいる国では、HPVの感染率が減少しており、子宮頸がん検診の対象をHPV陽性者のみに絞ることができています。

がんのリスクを抑えるとともに、検診にかかる費用も削減しているのです。

ワクチン接種と関連があると報告されている24の症状と、HPVワクチンと関連はないとの『名古屋スタディ』などの研究結果も出てきています。

現在日本では、年間1万人の女性が子宮頸がんになって、2700人が死亡しています。

他国の研究者たちは、日本は壮大な社会実験をしていると、皮肉めいたコメントを残しています。

数十年後に、他国と比べた、日本の子宮頸がん罹患率の結果はどうなるのでしょうか。

現在の状況から考えて、不幸な結果しか見えません。

歯周病は全身に影響する

厚労省 歯科疾患実態調査では、85歳以上で、20本以上歯が残っている人は25%に過ぎないとの結果が出ています。

現在、国民医療費の7〜8%、2.7兆円が歯科医療費として使われています。

これほどまでに歯に対する問題が大きくなっているのは、日本人は歯を磨かないからなのでしょうか。

いえ、歯を磨く習慣は国民に広く行き渡っています。

しかし、欧米の歯科医療が進んでいる国と違う点は、以下の2つの習慣がないことです。

  1. フロスを使う
  2. 歯科医で定期的にクリーニングする

歯周病菌は歯茎の毛細血管から体内に侵入し、血流に乗って全身を駆け巡ります。

歯周病と脳卒中、心筋梗塞との関連も数多く報告されています。

がんと同じように、一度歯周病になってしまうと治療するのは困難です。

しかしがんと同じように、歯周病にならないための対策は明らかになっています。

それは、以下です。

  1. 年に数回の歯科医でのクリーニング
  2. 食後と就寝前のブラッシング、フロス、
  3. 鼻呼吸です。

日本人の多くはブラッシングは行っていますが、フロスも合わせて行うことが必要です。

また日常のブラッシングとフロスだけでは、歯垢は取り除けないので、年に2〜3回、歯科医院に行ってクリーニングを行ってもらいます。

口呼吸で寝ていると口が乾燥して、唾液による殺菌効果が期待できません。

寝ているときに鼻呼吸をしやすくなる方法としては、口にテープを貼るのが有効です。

ぼくもセレブリーズという口テープを利用して、朝起きたときの感想によるのどの痛みが軽減されました。

がん検診受診率が低い

国民生活基礎調査によると大腸がん検診の受診率(40〜69歳)は、男性44%、女性38%と、半数に満たない状態となっています。

この調査は、サンプリングによる自記式となっており、実態より多めに計算されているのではないかと懸念されています。

臨床の現場の医師の感覚は、胃がん10%、大腸がん20%程度の受診率とも言われており、深刻な現状です。

がん検診は、日本ではありがたいことに公的負担となっています。

費用がかからないのに受診する人が少ないというのはどういうことなのでしょうか。

面倒というのもあるでしょうし、病気になってから考えればいいという安易な盲信があるのでしょう。

また、根拠のない健康法や、健康食品に頼っている場合もあります。

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」というたとえのように、人間は病気になれば、それを真剣に考えますが、病気になる前は考えないものです。

実際に、がんで闘病し、幸いにもがんを克服した有名人たちは、そろって検診を定期的に受けておくべきだったと後悔の念を述べます。

実際には、全国民に対して、がん検診も歯科健診も無料で実施できるような体制が整備されています。

ぼくの住んでいる浦安市でも、年齢制限はあるものの、早期発見の可能ながんについては無料で検診が受けられるようになっています。

それでも、検診を受けない人が多いのは非常にもったいない話です。

健診を受けている人は健康保険料を安くするなど、もっとたくさんの人が健診を受けるインセンティブ制度を設けるべきです。

▲浦安市の検診メニュー。

ちなみに、日本の胃がん検診ではピロリ検査(ABC検診)は含まれていないので、これは自費で加えるべきです。

まとめ

健康に関する情報はさまざまなものであふれていますが、科学的根拠のある情報を取捨選択すべきです。

科学的根拠のある情報は、現在たやすく入手できるようになっていますが、まだまだ国民の多くに浸透しているとは言えない状況です。

がんや、歯周病で苦しまないようにするための方法は難しいことではなく、定期的に検診を受けることです。

すべての国民が検診を受けられる制度は現状整っています。

今後は、いかに健診を受ける人を増加させる制度にするかを検討すべきです。