自己血糖測定器について話をしていると、よく病院で採血して測定した値と違うということが話題になります。
ぼくは以前自己血糖測定器を販売しているメーカーに勤務していて、その事情を知っているので概要を書いてみます。
この原因については、医療関係者であってもご存知ない方が多いです。
理由は大きく2つあります。
自己血糖測定器と病院での検査値の違いの理由 その1
測定に使う血液が違います。
自己血糖測定器で使う血液は、指先からの毛細血管血液で動脈血です。
病院で採血する血液は腕からの血液で静脈血です。
動脈と静脈では含まれる物質に違いがあり、血糖の濃度も違います。
特に食後では、動脈血の値>静脈血の値 となります。
また、採血する時間が違うことも考慮に入れなければいけません。
病院で腕から採血した時間と、指先から採血した時間が違えば、血糖値は異なります。
特に食後は、血糖値は時間とともに大きく変動します。
血糖測定器と病院での検査値の違いの理由 その2
自己血糖測定器と病院での測定では測定方法が違います。
測定方法が違っても、値が同じになるように補正すればいいのに、と思いますが、現実はそう簡単にはいきません。
測定機器、測定試薬を開発しているメーカーは、開発するときに、独自の基準をもって値を合わせています。
病院で使用される機器に関しては、病院が違っていても同じ値が出るようになってきています。
病院で使用する機器の測定方法は似ているので値を合わせやすいからです。
また、学会が主導して、学会が決めた標準に合わせましょうという動きを何年もかけて行ってきています。
しかし、自己血糖測定器については、測定方法が多種多様です。
そのため、自己血糖測定器のメーカーによって、どの血液で、どの方法で測定した値に合わせているかという指標が違っています。
測定方法が多種多様な場合、ある一つの標準に値を合わせるのは困難です。
自己血糖測定器の用途は、特定の人の中で血糖の上下の変動を見るというのが主目的で、多数の患者の血液を対象とする病院での測定とは背景が異なります。
だから多少の値の誤差については大きな問題になりにくいのです。
血糖測定器の値をどう活用すればいいのか
上記で述べたように、自己血糖測定器の値は病院で採血する値とは違います。
ですから、糖尿病の診断のためには、病院で採血して検査してもらう必要があります。
自己血糖測定器は、自分で何度も測れて、値の動きを見ることができるというのが大きなメリットです。
血糖値というのは、食後の時間によって大きく動くため、1点の値よりも、複数の値の動きを見ることが大事です。
ある1点の値が基準値を超えたかどうかを気にするのではなく、値の動きを重視することで、その人に即した血糖値を管理するのです。
最近発売されたCGM(Continuous Glucose Monitoring 持続的血糖モニタリング)という、体に装着していれば連続して測定するという機器を用いれば、より1日の血糖値の動きを正確に把握することができるようになりました。
このCGMも、病院で測定する値や、指先から測定する値と違うということがよく言われています。
この場合も、1点の値は参考程度にとどめ、血糖値の動きを把握するということを重視するようにすべきです。
まとめ
自己血糖測定器の測定値は、病院で採血して測る値と異なります。
そのことは前提とした上で、血糖値の動きを把握するという主目的に沿って使用することが必要です。