医療の巨大転換(パラダイム・シフト)を加速する――糖質制限食と湿潤療法のインパクト 江部 康二 (著),‎ 夏井 睦  (著)

糖質制限の発信者の二大巨頭が、医療のパラダイムシフトについて語りました。

そのパラダイムシフトとは、「糖質」の摂取と、傷に対する「消毒」を否定することです。

江部氏と夏井氏が、それぞれ「糖質」、「消毒」が不要であるとわかったのは、医療の現場での素朴な疑問に端を発しています。

両者の共通点は、現場での試行錯誤で得た事実を、インターネットを使って発信をし、反論に対して回答しながら、理論を深めていくという工程をたどってきたことです。

「消毒」を疑う

夏井氏が所属していた消化器外科では、術後に消毒をして、傷を濡らしてはいけないと教えられていたそうです。その後夏井氏は形成外科に移るのですが、そこでは手術後は、水道水で患部を洗っていました。

そこから、夏井氏は「傷は乾かさなければならない」という常識を疑い出しました。

加えて、手の手術でギプスをつけるとき、ギプスの中は消毒もしないし、垢だらけなのに、化膿しないことから、消毒にも疑問を持ったのです。

そして口唇裂という生まれつきに口が縦に開いている症例に対しての手術でも、消毒をしないことで、ますます消毒は不要ではないかと強く思うに至りました。

夏井氏はそれ以来、傷は洗えばいいし、消毒はいらないという方針で治療をし、たくさんの症例で効果をあげてきました。

夏井氏は、その症例を写真付きでホームページに公開するにつれ、様々な質問が寄せられるようになり、その質問に回答するために、理論構築が始まりました。

そして、消毒薬は、細菌を殺してはいない、単に休眠しているだけとい事実を突き止めました。消毒薬は細胞膜を壊す働きがあり、傷口の細胞も壊してしまうことも明らかにしました。今まで消毒薬が効果があるように見えたのは、薬液をかけることで菌を洗い落としていたからなのです。

だから、「消毒」はしてはいけない、洗うだけでいいということになるのです。

「糖質」を疑う

1999年に江部康二氏の兄の江部洋一郎氏が、先に糖質制限を導入していたものの、最初は、そんなはずはないと、疑って見ていたそうです。

ところが、江部康二氏は自院の患者や、自分自身で検証を重ねるうちに、これは「本物」だと気づき、研究を開始したのです。

江部氏は糖質制限を研究するうちに、糖尿病以外にも、ほとんどの生活習慣病は糖質過剰摂取の影響が出ていることに気づきました。

生活習慣病の元凶は「酸化ストレス」です。「酸化ストレス」は、食後高血糖と血糖値の変動幅の大きさが引き金となります。

血糖値を上昇させるのは「糖質」のみであるから、「糖質」を制限すれば、前述の「酸化ストレス」上昇のサイクルは起きません。

江部氏は、生理学的に見れば、人体にとって、食事から摂る糖質の必要最小量はゼロであると解説しています。

江部氏の研究は人類史にまで及び、人類の食生活は、農耕以前の数百万年は脂質とたんぱく質中心だったことから、糖質制限食は人類本来の食生活であると強調しています。

ライザップを初めとする、ダイエット法の普及によって、糖質の過剰摂取が肥満の原因であることが、一般にも認知されてきました。しかし、糖質摂取が生活習慣病の原因となっていることはまだまだ理解されているとは言えません。
長期間かつ、極端な糖質制限食は危険であると述べている医師もまだまだたくさんいます。

まとめ

夏井氏は対談の中で、専門医ほど新しい発想は受け入れられないのは、天文学の専門家ほど地動説を受け入れられなかったのと同じだと語っています。

医学界とは、専門家の集団から成り立っています。だからこそ、従来の常識を覆す理論はすぐには普及しないことがわかりました。

江部氏と夏井氏の理論には今後も注目していきたいと思います。