一流の頭脳 アンダース・ハンセン (著) 【ブックレビュー】‎

脳科学に関するベストセラー作家である樺沢紫苑さんが、メルマガの中で、「ものすごく共感した」と絶賛していた本です。

著者は、ノーベル生理学賞・医学賞の選定機関、スウェーデンのカロリンスカ研究所出身の精神科医、アンダース・ハンセン氏。

運動が、いかに脳の働きにとって有効なのかを、科学的にわかりやすく解説しています。

本書を読んで、運動が、ストレスと不安を軽減し、集中力を高めることが改めて理解できました。

脳の歴史

脳の歴史をひもとくと、理解が進みます。

「ルーシー」と名付けられた、エチオピアで発見された人骨が、現存するもっとも古い人類の祖先であると言われています。ルーシーは320万年前の猿人で脳の容積は0.5L、現代人の1.3Lと比べると1/3程度です。さらに100万年進むと、ホモエレクトスという原人の脳は1L弱まで大きくなり、火をおこし、道具や武器、衣服を作りました。10万年前にさらに脳は飛躍し、ホモサピエンスが他の6種を駆逐しました。勝因は脳の大きさではなく、大脳皮質の違いにあるとい言われています。

現在の人類の脳の容積は、他の哺乳動物の6倍となっており、突出して大きいことが特徴です。遠くまで走る動物の脳は大きく、それは著者が脳の最強の物質と呼ぶBDNF(脳由来神経栄養因子)が関係しています。

脳は700万年の歴史の中で、狩猟採集の生活に最適化されて進化してきました。

狩猟採集の生活を考えれば、なぜ人はストレスを感じるか、なぜ集中力が保てないかの理由が理解できます。

脳は10万年前とまったく変わっていないのに、脳を取り巻く環境が著しく変わったことで、様々の現代人の悩みが生まれているのです。

ストレスのメカニズム

ストレスは、外界の刺激に対して、脳の扁桃体が脅威を感じると、起こる反応です。まず、視床下部(Hypothalamus)がホルモンを出して、下垂体(Pituitary)を刺激します。下垂体は別のホルモンを出して、そのホルモンは血流を通って副腎(Adrenalgland)を刺激し、副腎はコルチゾールというストレスホルモンが放出します。この一連の反応をそれぞれの臓器の頭文字をとって、HPA軸と呼びます。

コルチゾールの血中濃度が上がると、闘争と逃走に備えて、筋肉に大量の血液が供給されるように、心拍数が上がります。わずかな変化にも反応できるよう、集中力も研ぎ澄まされます。

問題は、ストレス反応がいきすぎて、パニック状態に陥ることです。これを防ぐのが脳の海馬の役割です。外界の脅威に対して、扁桃体はアクセル、海馬はブレーキの役割を担うのです。

コルチゾールは、ストレスを生む状況が去れば減少します。しかし、ストレス状況が長引き、長期間コルチゾールにさらされると、海馬は萎縮してしまいます。

海馬が萎縮すると、扁桃体は暴走してしまい、ストレスがさらにストレスを生むという

悪循環に陥ってしまいます。

扁桃体ハイジャックという造語があるくらい、扁桃体の働きは強力です。扁桃体がひとたび暴走してしまうと、理性は太刀打ちすることはできません。

コルチゾールを手なずける

運動も、一種のストレスなので、運動している間は、コルチゾール濃度が上昇します。しかし、運動を繰り返していると、運動の間のコルチゾール濃度は上昇しにくくなっていきます。

さらに興味深いことに、運動を習慣づけていると、運動以外でもコルチゾール濃度が上昇しづらくなっていくのです。

不安もストレスも発生源は同じです。運動によってコルチゾールを手なずけることができれば、不安とは無縁の生活を送ることができます。

著者は、コルチゾールを手なずけるために、週に少なくとも3回、20分以上の、心拍数の上昇する有酸素運動を継続することを薦めています。

集中力を測定する

集中力の度合を測定する手法に、「エリクセン・フランカー課題」があります。これは、モニターに写った5つの矢印の中の、ちょうど真ん中の矢印の向きを答えるという課題です。

真ん中以外の矢印に気をそらされないことが重要で、この能力を「選択的注意」と呼びます。

週3回、45分のトレッドミルでのウォーキングを実施したグループと、同じ頻度で、心拍数が上がらないヨガやストレッチを行ったグループで、半年後に「エリクセン・フランカー課題」に取り組みました。

ウォーキングを行ったグループがよりよい成績を出し、前頭葉と頭頂葉が活発化していました。

ドーパミンの量を増やす

 ADHD(注意欠陥多動性障害)は、アメリカでは10代を含む全人口の12%が診断されている流行病です。

ADHDと診断される人は、報酬系が通常とは異なり、ドーパミンが放出される閾値が高くなっています。この閾値は人によってレベルが違うので、誰でもがADHDの素養を持っていることになります。
ADHDであることは狩猟採集生活においては、食物を多く獲得できることにつながります。しかし、農耕生活になってからはADHDであることは食物の獲得には不適合となり、現代社会においては、特殊な例を除いては、ますますその傾向が強まっています。
狩猟採集生活に適するように、注意力が広範囲に及ぶなるように脳は設計されてきたことがわかります。

ドーパミンはモチベーションを高めてくれるホルモンです。それに加えて、著者は集中力を高める働きがあると解説しています。

ドーパミン濃度が増えると、雑音を消すことができるのです。

そして、このドーパミンも運動によって分泌量が上がるのです。

ドーパミンの量を増やすには、ウォーキングよりも、ランニングの方が適していると著者は述べています。

To Do

脳のための最高のコンディションを保つための効果的な方法は、週に3回、ランニングを45分以上行うことです。

重要なポイントは心拍数を増やすことです。

まとめ

本書は、さまざまな現代人が抱える、心理学的問題点を取り上げ、脳の機能からその原因を分析しています。

それに対して、著者の提示する対策はとても簡単です。

すべての脳の問題は、定期的で、かつ心拍数を高める、有酸素運動で解決するのです。

僕は、毎日20分の軽いジョギングを行っています。これは朝日を浴びることで、セロトニンの分泌を高めて良質な睡眠を得るために行っています。

今後はこれを30分に増やし、ドーパミンの量を増やして集中力を高めるという目的も追加して、行っていこうと思います。