『20歳の自分に受けさせたい文章講義』を読みました。
古賀 史健さんは、岸見一郎さんと共著でベストセラー『嫌われる勇気』を書いたライターです。
アドラー心理学という一般には取っつきにくい分野について、これほどまで多くの読者を惹きつけたのは、古賀さんの文章力が大きく影響していると思いました。
古賀さんのように読者を惹きつける文章を書くには、どのようなところを意識すればいいのかを学びたくて本書を手に取りました。
20歳の自分に受けさせたい文章講義 古賀 史健 (著) 【ブックレビュー】
話すことと書くことはまったく別の行為である
本書のテーマは「話し言葉から書き言葉へ」のノウハウであると古賀さんは述べています。
話し言葉にあって書き言葉にはないものがたくさんがあります。
それは声の大きさ、トーン、などの聴覚情報と、表情、身振りといった視覚情報です。
日常会話では声の調子や顔の表情に感情を乗せます。
これらの感情をいかに言葉に乗せるかが、「話し言葉から書き言葉へ」のノウハウです。
書こうとするな、翻訳せよ
「頭の中のぐるぐるを、伝わる言葉に”翻訳”したものが文章なのだ」、と古賀さんは表現しています。
書くのではなく”翻訳”するのだと気づいてから、古賀さんは文章を書くのが楽しくてたまらなくなったと述べています。
“翻訳”とは「その分野の素人にも通じる言葉」に変換することなのです。
たった2人の読者に向けて書く
古賀さんは、飲食店のオーナーがお客さんの立場になってものを考えるには、お客さんが座る椅子に座らなければわからないと述べています。
文章も同じで、読者と同じ椅子に座って同じ景色を見ることで読者を理解することができるのです。
そして本当の意味で同じ椅子に座れるのは、世の中にたった2人しかいないと古賀さんは断言します。
それは
①10年前の自分
②特定のあの人
です。
有益な情報とは、「10年前の自分が知っていたなら!」と思わせるものです。
10年前の自分が座っていた椅子に座って、10年前の自分に対してどんな言葉を使い、どんな言葉に耳を傾け、どう伝えたら納得してくれるかを考えて書くのです。
10年前の自分の悩みが深ければ深いほど、普遍的なものであるほど、10年前の自分と同じ悩みを抱える人は増えていきます。
『嫌われる勇気』の青年は、もしかしたら10年前の古賀さんなのではと、ふと思いました。
次に、②特定のあの人に向けて書くとはどういうことなのでしょうか。
実は”読者”なる人物はどこにもいないと古賀さんは述べています。
文章を読む人の数だけ、その人数分の読み方で読んでいるのです。
対象読者を絞りきれず、多数派に向けて書こうとすると、保守的で刺激のない八方美人的な姿になってしまうのです。
八方美人的にならないために必要なのが、「たった一人の”あの人”を思い浮かべて書くという意識だ」と古賀さんは表現しています。
批判を恐れず、強い主張がある文章にこそ読者がつくのです。
人は「他人事」では動かない
われわれは「正しい」だけでは動きません。
「他人事」ではない当事者意識が芽生えて、初めて心が動きます。
古賀さんは、仮説と検証が読者に当事者意識を芽生えさせる有効な方法だと解説しています。
文中の早い段階で、一般論とはかけ離れた仮説を提唱し、それをどう思うか読者に問いかけ、読者と一緒になって検証作業を行っていくのです。
今まで僕が引き込まれた本のほとんどに、このような仮説と検証のストーリーが組み立てられていたことに今初めて気づきました。
この文章展開は起承転結ではなく、起転承結になります。
承のの部分で読者もプレーヤーとして巻き込んでいくのです。
20歳の自分に受けさせたい文章講義 まとめ
本書を読んで、読者を惹きつける文章の書き方を学ぶことができました。
10年前の自分を読者として意識するという部分がが最も参考になりました。
今後はこのブログを10年前の自分に向けて書いていこうと思いました。