森川滋之さんの新刊、『奇跡の営業所』を読んだ。
著者の森川さんは、僕が「稼げるライター養成講座」でライターの基礎をいちから教わった師匠だ。
「稼げるライター養成講座 第1期」受講を終えて | むくどりのブログ
森川さんはIT企業でプロダクトマネージャーなどを歴任したあと独立し、営業コンサルタント活動を行った後、現在はITに強いビジネスライターとして執筆分野で活躍されている。お酒好きで焼き鳥屋評論も連載するなど、親しみやすく、尊敬すべき著者だ。
さて本書は、営業未経験のスタッフ達の心にスイッチを入れて、自立して目標に向かう集団にさせたという営業マネージャーの実話をもとにした物語である。
僕は25年間の会社員時代の大半を、ずっと「営業所」で仕事をしてきた
最初は営業マンとして、後半は営業マネージャーとして。
それぞれの仕事の難しさ、楽しさは、体験してきたからこそ、いろいろな考えが染みついている。
特に営業マネージャーの仕事は難しさを感じ、今でもあのときこうしておけばよかった、などと思い返すことも多い。
本書を読んでいて、涙腺が緩むシーンが何度かあった。
それは、お互いがお互いのために、人から見えないところで努力を積みかさねる姿に感動するからだ。
主人公の営業所長の吉田和人の行動、振る舞いは僕にとってはとても共感できるものだ。
自分の体験に照らし合わせながら読み進めた。
僕なりの解釈だが大事だと思ったポイントを3つあげてみたい。
奇跡の営業所 仲間と働く喜びに気付く物語 森川滋之 著 【ブックレビュー】
本部のやり方をそのまま降ろさない
主人公の和人は赴任して間もなく、スタッフの全員が営業未経験の素人だということがわかり愕然とする。
そして考え抜いた末の決断は、本部の決めた体制とは違う独自の体制づくりだ。
当初は結果が出ず、和人の上司である部長から独自の体制を批判されるが、和人はそれでもめげず粘り強く結果が出るまで耐えた。
本部や上司の指示と違うやり方をすることは非常に勇気のいることだ。結果が出れば評価されるが、結果が出なければマネージャー降格は避けられない。
市場と現場スタッフの力量をしっかりと分析して、結果が出るという自信を得られなければ実行はできない。
僕の場合はどうだったかというと、上からの指示を忠実に落とし込むやり方をしていた。
明らかにむだだと思うことで、自分の裁量で何とかなることだけは、降ろさないようにしていた。
中間管理職の立場で独自のやり方を貫いて結果を出すというのは、それぞれの会社の規模や状況にもよるが相当難しいことだ。
批判を受けても、現場のことを考えて正しいと思えばそれを実行する。それは営業マネージャーに必要なことであると僕は考える。
信頼して任せきる
和人の姿勢として一貫しているのは、自分のやり方を強制しないということだ。
和人は前職で圧倒的な結果を出したからこそ、本部としてはそのやり方を教育してほしくて今回のポストを任せたわけだが、和人はそれをしなかった。
聞かれなければ教えない、頼まれなければ同行しないという姿勢を貫いた。
その結果として最終的には、スタッフがそれぞれ自分のやり方を試行錯誤しながら、和人が驚くほど自立して成長していたのだ。
任せるだけでなく、和人の信頼が伝わったからこそ、任されたスタッフは自ら努力をしたのだ。
僕は和人と同じく任せるタイプだった。しかし任せながらも、不安は常につきまとう。余計な口出しをしてしまうことはしばしばあった。
自分のためでなく、人のため
営業所のため、営業所の仲間のため、所長のため、こういう気持ちの方が営業パースンは頑張れるのだと僕は思う。
人のために頑張る姿勢は、周囲からの応援が得られるため、実現の可能性も高くなる。
営業所のために頑張ろうと思う気持ちを醸成するのが、営業マネージャーの一番重要な役割であると思う。
人から支援を受けていると感じた人は、その人のためになれるよう努力する。
和人はスタッフに安心感を与え、スタッフの仕事を正しく評価し自信を与えていくことで、スタッフに対する支援を続けていった。
また、スタッフの個人的な価値観をきちんと聞き、それを理解することで、スタッフの共感を得ることができている。それが大口兄弟の成功の要因だ。
営業所のために頑張るという雰囲気づくりは、営業マネージャーがつくるべき最も大きな仕事だと改めて思う。
まとめ
僕はフリーランスになって1年間、組織で仕事を行うことから遠ざかっていたが、この本を読んでチームワークとは何かを改めて考えさせられた。
フリーランスの仕事でも、仕事が大きくなるにつれ、人と協働して仕事をすることが多くなる。
そのときに人との関わりで大事なことは、営業所と同じではないかと思う。
この本には物語があってその後に解説がある。
チームワークと営業の基本的なことについて体感的に学べる本だ。