糖質制限医療推進協会 江部康二氏 講演レビュー 2019年9月

糖質制限医療推進協会  江部康二氏 講演レビュー 2019年9月

2019年9月29日、糖質制限医療推進協会の講演会を聴講してきました。

江部康二氏、田頭秀悟氏、宗田哲男氏の講演がありました。

本記事では江部康二氏の講演内容のまとめを書きます。

糖質制限食は人類本来の食事

人類から糖質を食べるようになったのは、1万年前からです。

長いように感じますが、人類誕生から現在までの700万年間のスパンで考えるとつい最近のことです。

そして精製された糖質(精製小麦粉、白米)を食べるようになったのはわずか150年前からです。

ぼくが糖質制限食をしていると言うと、日本人は農耕民族だから米を食べるべきだと言う人が結構います。

しかし、これは誤解です。

日本人は旧石器時代、縄文時代と数万年間は狩猟・採集生活でした。

2,500年前から弥生時代となり、ここで初めて農耕生活となったのです。

狩猟・採集生活の食事は、糖質制限食です。

ぼくも昔は日本人は農耕民族であるという説を信じていて、玄米菜食を行っていた時期があります。

江部氏も2001年に糖質制限食に取り組む前は、玄米菜食で、病院の食事にもそれを取り入たそうです。

しかし江部氏本人も2型糖尿病を発症しました。

それを契機に、江部氏本人が糖質制限食を実施すると同時に、江部氏が経営する高雄病院で糖質制限食を導入しました。

玄米菜食や運動療法でよくならなかった重症の糖尿病患者が劇的に改善したのです。

人の体は、進化の過程をみても、大量の糖質を処理できるようにはなっていません。

食後血糖値の移り変わり

食後血糖値の差がどのように変化してきたか、江部氏は以下のように解説しました。

  • 農耕が始まる前→食後血糖値の差 10−20mg
  • 農耕以後→ 食後血糖値の差 40mg
  • 精製炭水化物以後→ 食後血糖値の差 60−70mg

現代人は1日3食と間食で、1日に複数回の精製炭水化物を食べています。

精製された炭水化物は急激に血糖値を上げ、その後に反動で急激に血糖値が下がります。

食後に血糖値が大きく上下することを血糖値スパイクといいます。

江部氏は、血糖値スパイクこそが、さまざまな生活習慣病の元凶であると強調しました。

血糖値スパイクがなぜ病気の原因になるのか

血糖値スパイクによって起こることは以下の2つです。

  1. 酸化ストレス
  2. 追加インスリンの頻回分泌

江部氏は、血糖値スパイクが「酸化ストレス」を引き起こすと解説しました。

「酸化ストレス」はアトピー、アレルギー、老化、生活習慣病の根本原因とされています。

酸化ストレスとは、酸化反応が抗酸化反応を上回った状態のことをいいます。

高血糖になると、血糖がタンパク質と結合して、活性酸素の除去をじゃますることで「酸化ストレス」を引き起こします。

インスリンは、基礎分泌追加分泌の2種類があります。

基礎分泌インスリンは24時間ずっと少量分泌されているもので、血糖値を安定させています。

追加分泌は血糖が上昇したときに、それに応じて分泌されるインスリンです。

現代の食生活は、狩猟採集生活のときに比べて、食後の血糖値の差が大きく、回数も増えているため、追加インスリンの量と回数が数倍に増えています。

インスリンは余分な血糖や脂肪を、中性脂肪として蓄える働きがあり、大量のインスリンは肥満を引き起こします。

アメリカ糖尿病学会が糖質制限食はエビデンス豊富と声明

ADA (アメリカ糖尿病学会)2019年4月発表「成人糖尿病患者または予備軍患者への栄養療法」ガイドラインでは、糖質制限食を、最もエビデンスの豊富な食事療法と明記しています。

米国糖尿病学会では、2013年の声明から、糖質制限食を、他の食事療法(地中海食、ベジタリアン食、DASH食、低脂質食など)とともに、正式に受容しました。

それ以来、アメリカの糖尿病療養食の糖質のカロリー比率は40%に減りました。

その結果、1990年から2010年の間に、合併症の発生率は急速に低下しました。

一方、日本では糖質比率は60%のままで、合併症は減っていません。

まとめ

糖質制限医療推進協会の江部氏の講演は2017年から聴講していて、今年で3年目です。

内容は以前から一貫して不変です。

糖質制限食は、人類本来の食事であることを改めて認識することができました。

日本の糖尿病医療にも、正式に導入されていくことを期待してやみません。