『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ(著) は人間を理解するために重要な視点を与えてくれる書です。
今回は農業革命についてまとめます。
1万年前に農耕が始まった
農耕は中東で1万年ほど前に始まりました。
時期的なずれはありますが、中国、中央アメリカでも農耕が始まりました。
それは中東のそれが伝播したのではなく、突発的にそれぞれの地域で起こったのです。
きっかけは1万8000年前の最終氷河期の終わったあとの温暖な気候です。
農耕の主役である小麦にとって適切な気候になりました。
農耕生活を始めた人々は、定住を始め、人口を飛躍的に拡大させました。
農耕生活は狩猟採集生活より劣悪だった
農業革命はサピエンスという種にとってはは躍進でした。
それはDNAの複製を増やしたからです。
しかし個々の人々の生活は劣悪化しました。
農業革命は、少数のエリート層と、貧しい大量の農民層の格差を生み出しました。
農民は、長時間労働、飢餓、病気に苦しみました。
一度農耕生活を始めてしまったら、人口は増加していくので、人々はいくら生活が苦しくても、農耕生活をやめることはできなくなりました。
農耕が始まった理由として、神殿群の建設のために人手が必要で、大量の食物が必要だったという説も有力となっています。
余剰食料が神話を生み出した
農耕は人に初めて未来への不安をもたらしました。
しかし多くの農民は不安を打ち消すほどの蓄えを持つことはできず、一部のエリート層に余剰食料が集まるだけでした。
この余剰食料が政治、芸術、哲学の原動力となりました。
歴史とは9割以上の農民たちによって支えられた一部の人たちの営みです。
余剰食料と輸送技術で都市が生まれました。
人々は社会を統治するために、神話を生み出しました。
神話は誰も想像し得ないほど強力な力を持ちました。
神話から想像上の秩序へ
人々の生活を支配している秩序は想像上のものです。
しかしその力は強大で何百万、何千万という人々を説得しなければ覆すことはできないものです。
現象には3つあります。
「客観的」「主観的」「共同主観的」の3つです。
「客観的」な現象とは人間の意識や信念とは別個に存在するものです。
「主観的」な現象とは私という1人称の意識や信念に基づいています。
他人にはまったく見えないのに、その存在を信じているという人はたくさんいます。
「共同主観的」現象とは人々の意識のネットワークの中に存在します。
実在せず、想像上のものであったとしても大きな影響力を持ちます。
例えば法律、貨幣、国家、神々などです。
想像上の秩序から逃れる方法はないと著者は解説しています。
まとめ
農業革命によって、個々の人々の生活は狩猟採集生活に比べて劣悪となりました。
しかし、サピエンスという種は人口を拡大させることに成功しました。
農耕は、余剰食料と輸送技術の発達をもたらし、都市を生み出しました。
そして強大な想像上の秩序を生み出しました。
本書を読んで、現在の社会も想像上の秩序が支配していることがわかりました。