君はどこにでも行ける【レビュー】堀江貴文 著

堀江貴文さんの新刊『君はどこにでも行ける』を読んだ。

堀江さんが2年半、世界28カ国58都市を訪れて感じ考えたことがぎっしりと書かれている。

また5章には、いやおうなしに訪れるグローバリズムへどう対応していったらいいか、いま、そして未来をどう生きていけばいいか、人生論まで踏み込んだ内容となっていて引き込まれて読んだ。

全世界の動きが明確にシンプルに書かれていて大変参考になった。各章について印象に残った部分と自分の感想を紹介したい。

1章 日本はいまどれくらい「安く」なってしまったのか

  • 日本のGDPは今アメリカの1/4、 中国の半分で、一人あたりGDPは27位まで落ちている。
  • なぜアジアの観光客が押し寄せて爆買しているか、それは、日本が安くなったからである。
  • 移民を開放したところでもう日本には来ない。

▲日本はアメリカに次ぐ世界第二位の経済大国だと思っている人はまだまだいるのではないだろうか。もう日本はアジアの他国から見ても安くなっていることに気づかねばならない。

2章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈アジア 編〉

世界の主要な経済圏はアジアになる
  • シンガポールでは3年前とはまったく違う風景となっている。東京からキャバクラ嬢が働きにきていたりする。教育環境も良く日本の富裕層がどんどん家族で移住している。
  • 香港では中国バブルの衰える兆しはまったくないことを感じることができる。
  • 中国の都市部では日本の20代30代よりもはるかに豊かな人たちがたくさんいる。
  • 韓国はインフラにデジタルを取り入れるスピード感が素晴らしい。国内のマーケットが限られているから世界に出ていかざるを得なかったことが功を奏している。
  • タイはアジアの経済発展のモデルケースの国であり、大富豪が多い。バンコクは日本の地方都市より収入が高くなってきている。

▲アジアの国々がここまで発展して豊かになってきているとは、この本を読むまでは把握していなかった。

アジアの国々というのは貧しく、物価が安い、というのが多くの日本人の感覚だろう。もちろんまだまだそういう国や、地域はあるだろうが、アジアに対する見方を大幅に変えて、アジアの国々と一緒に連携、発展していくという姿勢が今後必要になってくるだろう。

3章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈欧米その他 編〉

  • アメリカの宇宙事業は今は民間主導。
  • 欧米ではスノーボードやサーフィン、モトクロスバイクなどのエクストリームスボーツは莫大な金が集まる産業だ。アメリカでは野球、アメフト、バスケ、アイスホッケーの4大メジャースポーツに追いつこうとしている。
  • デンマークなど北欧諸国では日本より早い段階で成熟社会に移行しており、労働に時間を費やすより、いかに充実した余暇を過ごすのかを大事にしている。
  • アフリカ大陸では、いたるところでいま”リープフロッグ”現象が起きている。”リープフロッグ”現象とは、段階的ではなくいきなり最先端のインフラを導入する現象のこと。ブロックチェーン技術を用いた銀行システムなど、先進国でも導入されていない最先端の技術の導入が進んでいる。
  • IoT革命をきっかけに世の中の仕の半分以上が20〜30年後には消えると言われている。そうなったときに価値が出るのが「おもしろいことを生み出す感性」。これはロボットでは思いつかない。遊びがビジネスになったとき誰が儲かるか。遊びを極めたものだけが持っている知識が高い値段で売れるようになる。

▲成熟社会にいち早く突入している欧米の産業、そして北欧の働き方は日本の将来を知るのにとても参考になる。アフリカの今後の行方はダイナミックな動きが予想され注目すべきだ。

4章 それでも東京は世界最高レベルの都市である

  • 一昔前はバブルで儲けたビジネスマンなどがゴルフやグルメのためだけに、飛行機に乗ってバンコクやシンガポールや上海の富裕者向けレストランに行っていたのと同じ現象が逆転しておきている。
  • 東京の未来像はごはんの美味しいロンドンだ

▲日本が安くなって、世界からみた「東京」の価値はますます高まっていくのだろう。日本にいるとわからない、世界からみた「東京」やその他の都市の価値を認識することが重要だ。

5章 国境は君の中にある
特別章 ヤマザキマリ×堀江貴文

  • 僕達に行けない場所はない。もう国の「そと」と「なか」を区別する意味はなくなろうとしている。
  • 国内のいいものと海外のいいものを、同じぐらいに手軽に取りに行ける、それがグローバリズムの旅の醍醐味。
  • いま現在の不安やアイデンティティのゆらぎはグローバル化によって時間が経てば消えていく。
  • 日本から出て行ってもいい、出て行かなくてもいい、僕たちはすでにグローバリズムの流れの中にいる。思い込みの抑止力はいずれ弱まっていくのだ。
  • 「好きなことを好きなだけやる」生き方が、より明確に価値を持つことになる。
  • 国境や言語など、かつては乗り越えることが困難だった壁が取り払われていくことで、あらゆるチャレンジが容易になっていって「好きなことをしている人がビジネスでも人生でも、一番強い」時代へ、日本も移行するだろう。いや実はもともとそうなのだけど。

▲この章が一番こころに刺さった。「好きなことを好きなだけやる生き方が価値を持つ」と。これはこころの中の国境を取り払うことでますます強くなっていくのだ。

まとめ

この本を読む前は、もっと世界に飛び出して活動しようというメッセージの本かと思いきや、最後の章でわかったのだが、頭の中の国境を取り払おうというのが主たるメッセージであった。

「グローバル化は、いまの不安やアイデンティティのゆらぎを消していく」のだと。そのためにも自分の中から国境と、長年の経験から培った概念も取りさることが必要だ。

そのためには現在の世界の動きを良く知ることが大切だが、現在のグローバリズムをこれほどまでに的確に分かりやすく解説してくれているこの本は大変貴重だ。

世界へ出て行く機会もそのつもりもない人にこそオススメの本だと思う。