『金融政策の死』【レビュー】金利の理解が難しいということを思い知らされた

野口 悠紀雄 (著)『金融政策の死 ―金利で見る世界と日本の経済』を読みました。

野口悠紀雄氏の著書を続けて読んでいますが、本書は金利についての基礎的知識の解説に多くのページが割かれています。

金利を基礎から理解したいと思って読み始めましたが、ピントこないところが多く、方程式などがでてきた途端に思考停止に陥ってしまいました。

実際に外国との取引を行うくらいでないと、金利や為替というのは、なかなか実感がわかないのではと感じました。

金利の基礎的知識の理解はてきていませんが、自分なりに本書を読んで知った点を3点まとめます。

フィッシャー方程式

フィッシャー方程式とは以下の公式をいいます。

  • 名目金利=実質金利+期待インフレ率

フィッシャー方程式の解釈が難しいのは、上記の数式を入れ換えて、

実質金利=名目金利−期待インフレ率

とはできないところです。

実質金利は直接計測することはできません。

実質金利は、経済の構造で決まるものであり、インフレ期待とは無関係に決まると野口氏は解説します。

日本もアメリカの数十年のレンジでみたとき名目金利が低下しており、それを引き起こした大きな原因はインフレ率の低下です。

しかし、実質金利については、日米で違いがあります。

日本はアメリカに比べて、総資本利益率の低下が見られ、特に製造業において顕著になっています。

日本では名目金利低下の原因は、インフレ率の低下だけではなく、実質金利低下の影響を見過ごしてはならないと、野口氏は警笛を鳴らしています。

名目金利が一定のときに、期待インフレ率が上昇すれば実質金利が下がって景気がよくなるという説は間違っていると、野口氏は解説しました。

金利差で動く為替レート

為替レートとは、経済のフローによって変動すると捉えがちです。

しかし、実際はフローよりストック、つまり経常収支ではなく、資本収支によって動いています。

そのため、各国の金利動向が影響を与えます。

経験的には2年債や3年債の金利差との相関が高いと言われています。

それを説明するのが為替の金利平価式です。

  • (日本の金利)-(外国の金利)=(円の減価率)

2004年からの円安は、日米の2年債の金利差が4%もあったため、円キャリー取引が増加したからだと野口氏は解説します。

しかし、資産のファンダメンタルズ価格については、誰もが認める客観的な値を示すことは難しいため、計算は非常に難しくなっています。

為替レートがバブルか否かの判定も、円高や円安が進行中は難しいのです。

金利への無理解が生んだ年金制度の失敗

厚生年金は、すでに保険料を納付済の人々に対して必要な給付金額から国庫負担金を差し引いた額と、実際に積み立てられている金額との差が500兆円にもなっています。

積立金不足の基本的な原因は、保険料に対して大きすぎる給付を約束しているからです。

その約束の間違いは高すぎる利回り想定からきています。

この500兆円の差額を埋めるには3つの方法があります。

  1. 受給者に追加負担を求める
  2. 国庫負担金を上げる
  3. 将来世代が負担する

どの方法についても困難を極めます。

つまり、年金の債務は政府の国民に対する債務であり、国債残高と同様に扱う必要があるのです。

年金の債務は国債残高の60%になっています。

莫大な年金債務をどのようにソフトランディングさせていくのか、野口氏の他著や、その他のアナリストの見解をさらに知りたくなりました。

まとめ

消費者物価指数を構成する物価のほとんどはフロー価格であり、バブルを起こすことはありません。

バブルを起こすのは、ストック価格であり、それは為替レート、株価、不動産価格、国債価格です。

フロー取引についてはネガティブ・フィードバックがかかって均衡を保ちますが、ストック取引の世界ではポジティブ・フィードバックがかかって不均衡が拡大します。

経済というのは、知れば知るほど理解が難しい自然科学だとつくづく思います。