期待バブル崩壊 野口悠紀雄(著)【レビュー】今後発展する産業分野がわかった

期待バブル崩壊――かりそめの経済効果が剥落するとき』野口 悠紀雄 (著)を読みました。

著者の野口悠紀雄氏は、アベノミクスで放たれた3本の矢で、意図したとおりの経済拡大効果が出たのは、公共事業の増加のみであると言い切っています。

1980年代以降、日本経済は衰退傾向にありますが、何度かバブルを経験しています。

そのバブルに共通しているのは、金融緩和と円安が伴っていたことです。

そしてアベノミクスによってもたらされたと言われている現在の円安は、金融緩和策によって起こったのではなく、たまたま国際投機マネーの動きによって起こったことであると解説しています。

本書を読んで新たに得た、3つの視点をまとめます。

金利差では為替レートを説明できなくなった

円キャリートレードとは、円をドルに替えて運用する取引です。

日本の金利が安く、アメリカの金利が高いときに運用される取引ですが、これが進みすぎると円高が進み金利差を打ち消すようになると言われています。

しかし、2004年から2007年の間は、一定限度の円キャリートレードが起こっても、日本政府が介入して円高を阻止することが期待されたから、どんどん進みました。

しかし2012年秋以降に起こった円安は、ユーロ危機が収束したために、資金がユーロに戻ったために起こったことであり、金利差とは無関係でした。

円はユーロ情勢に大きく影響を受けています。

現在の円の為替レートは、日本の政策ではなく海外の要因で動くようになっています。

現在ユーロ危機は収束していますが、再燃する可能性は否定できません。

銀行貸出の状況はどうなっているのか

銀行貸出残高の増加は、消費税増税前の駆け込み需要による住宅ローンがほとんどを占めています。

企業は内部留保を増加させているため、資金重要は増えておらず、製造業に対する設備資金貸出はほとんど増えていません。

住宅ローンは、長期金利が歴史的低水準となったため増加しましたが、将来の需要を先食いしている可能性が高いと言えます。

つまり、今後の銀行に対する資金需要の増加は見えづらい状況になっています。

GDP需要項目を支えているものは実質消費である

実質GDPの成長のほとんどは民間最終消費支出の増加であることをデータが示しています。

消費のうち、「娯楽、レジャー、文化」の増加が著しく、2001年からの10年間で98%、52兆円の増加となっています。

これは、企業の設備投資総額66兆円とほぼ変わらない数字です。

物価が下落しているため、名目消費は横ばいとなっていますが、GDP成長の要因となっていることは間違いありません。

高額消費については、全体の割合からするとわずかであり、ちまたで言われているほどトリクルダウン効果が波及しているとは言えません。

実質消費増加の主たる要因は、物価下落です。

名目賃金は変わらない前提では、物価下落で生活必需品コストが下がることで、先程あげた「レジャー、娯楽、文化」への消費が活発になります。

政府の掲げる消費者物価指数上昇率アップという目標は、この成長メカニズムを壊す動きであると、野口氏は警笛を鳴らします。

まとめ

すでに1国の政府の政策によって、自国の金融市場すら操作できない時代になっているということがわかりました。

物価下落は経済にとって悪いことではなく、それによって新たな消費が生まれ、実質GDPを押し上げる効果があることがわかりました。

「娯楽、レジャー、文化」が企業の設備投資と同じくらい増加しているということに驚きました。

今後生活に必要な物価が安くなることで、このような分野がどんどん活発化していくのだと実感できました。

堀江貴文氏がよく「遊び」が仕事になると発言しているのは、すでに経済データにも現れているということがわかりました。

この「遊び」の分野こそが、今後の成長分野なのです。