野口 悠紀雄 (著) 『1500万人の働き手が消える2040年問題』を読みました。
2013年の労働力は6,577万人となっています。
それが2040年には約5,000万人になると想定されています。
アベノミクスの効果として有効求人倍率が上昇していると言われていますが、需要増で求人が増えているのではなく、すでに始まっている労働力不足が原因であると野口氏は強調します。
本書を読んで学んだ3つの点をまとめます。
円安は一部の人の資産を増やしただけ 『1500万人の働き手が消える2040年問題』
2012年9月から2014年8月の2年間の株高でもたらされた国民の利益は107兆円にのぼります。
この額は給与報酬全体の2割になります。
高額所得者ほど株券を資産として持っているから、高額所得者ほど資産を増加させています。
実際のデータでは、5,000万円以上の資産を持っている層は国民全体の7.9%になりますが、資産を25.8%増加させています。
一方、資産5,000万円未満の層では6.5%の増加にとどまっています。
未実現のキャピタルゲインには課税されませんので、所得の再分配は実現されていませせん。
多くの給与所得者は、株高の恩恵を受けるどころか、円安による物価高で実質所得を減らしています。
給与所得者の所得は完全に把握されているにもかかわらず、給与所得者層以外の金融資産について課税当局は把握していません。
野口氏は、国民総背番号制を用いて、国民の金融資産を完全に把握してきちんと課税すべきだと主張します。
不思議なことに、所得の再分配を公平に行えるはずの国民総背番号制について、多くの国民が反対して自らの首を締めているのが現状です。
インフレ目標は正しいのか
政府はデフレ脱却を目指し消費者物価指数上昇率2%を目標に据えています。
この消費者物価指数上昇率は、6ヶ月前の輸入物価上昇率に連動しています。
輸入物価上昇率は原油価格に依存しています。
輸入物価上昇率の動きからは、目標値の2%は実現できないことが明白です。
そのため、原油の影響を除外して計算した消費者物価指数を目標にすべきとの案も出ています。
野口氏は、修正案を議論するよりも、そもそもインフレ目標そのものを続けるかどうかを議論する必要があると強調します。
インフレには、実体経済を反映した良いインフレと、その逆の悪いインフレがあります。
前者をデマンドプルインフレ、後者をコストプッシュインフレといいます。
現在政府が起こそうとしているインフレはまさに、コストプッシュインフレだと野口氏は分析します。
インフレ率の上昇によって、消費所得が下がり、消費の伸びがマイナスになっているのです。
金融緩和政策に出口はあるのか
金融緩和政策は、円安を誘導し、計算上の製造大企業の売上を上げることで、株高を演出しています。
しかし、企業の生産量は増加しているわけではなく、実体経済は好転していないと野口氏は述べています。
円安は消費者物価指数を上げることで、国民の実質所得を下げ、消費を縮小させます。
このまま円安が続くことは、キャピタルフライトを誘引させることとなり、ますます円の価値が下がる恐れがあります。
野口氏は、この円安の流れを止めるためには、アメリカのように金融緩和政策を停止する必要があると述べています。
金融緩和政策を止めると、金利暴騰の危険があるため、慎重に実施する必要があります。
また、社会保障の改革も併せて行うことが必要です。
そして生産性の高い産業をつくって実態経済を成長させていかなければなりません。
まとめ
最近野口悠紀雄氏の経済本を続けて読んでいます。
グローバル経済からみた日本経済を考える上で、今後も円安が続くことは危険であるということがよくわかりました。
金利暴騰を起こさずに、どのように金融緩和政策から脱却し、財政赤字を減らしていくのか、注意深く見守っていきたいと思います。