円安待望論の罠 【レビュー】金融緩和政策の実態とこれから起こりそうなことを学んだ

野口 悠紀雄 (著)『円安待望論の罠』を読みました。

経済分析は野口悠紀雄氏の意見を参考にしています。

金融緩和はどういうことかということを、非常に明快に語った動画を見て以来です。

一般的に経済を語るとき、3つのワードが中心となります。

それは、株価、為替、金利です。

ぼくは理系出身で、きちんと経済学を学んだことがありません。

そのため、この3つのワードが出た途端に思考停止に陥ります。

今回、為替について正しい知識を得たいと思い、本書を手に取りました。

本書を読んで学んだ3つのことをまとめます。

アベノミクスによって円安になったのか

現在株価が好調な原因は、円安によると意見が多数を占めています。

そして円安、株高は、アベノミクスの金融緩和によってもたらされたと言われています。

しかし、実は現在の円安は2012年の秋から始まっており、それは民主党政権時代です。

野口氏は、金融緩和で円安になったのではないと断言しています。

円安のきっかけは、ユーロ危機によって円に流入していたユーロが、ECBがギリシャ国債の買い入れを発表したことで、還流したためだと野口氏は解説します。

金融緩和をしていなくても円安は起こっていたと野口氏は持論を述べています。

金融緩和によって金利を低く抑えているから円安を保てているという論調もあります。

為替レートは金利差によって動きます。

つまり金利の安い通貨から金利の高い通貨へ資金が移動するからです。

実際に金融緩和政策によって、金利は抑制されました。

それは市場にマネーストックが増えたからではなく、日銀が高値で国債を買ったからです。

日銀による国債購入により、銀行の日銀当座預金の総額(マネタリーベース)は増加していますが、企業の資金需要がないため、銀行預金と日銀券の総額(マネタリーストック)は増えていないのです。

そして、日米の金利差は、円安を引き起こすほどの差は生じていないと、 野口氏はデータを用いて説明します。

なぜ円安で経済が好転しているのか

野口氏は、円安で経済が好転しているように見えるだけで、実態はなにも変わっていないと強調します。

円安で利益が増えているのは、製造大企業です。

輸出量は実際には増えておらず、円換算の数字が増えているから、計算上売上が増えているだけなのです。

原材料の輸入コストの増加もありますが、輸出額に比べて金額が少ないため、円安の影響は少なくなります。

同じく製造業でも、下請け中小企業は、大手の生産高が増えていないので、売上は増えず、利益は変わらないか減少しています。

アメリカ金融正常化以降の世界

アメリカFRBは2014年10月以降の新規債権購入を停止しました。

これは金融緩和の終了宣言です。

これは投機の時代の終了を意味すると野口氏は解説します。

投機とは金融緩和政策を前提とした、短期借り入れでレバレッジをかける取引なのです。

アメリカが金融緩和政策を終えることができるのは、ドル安を必要としない経済になっているからです。

アメリカは2014年以降、年率2%の経済成長率を実現しています。

一方で日本、ユーロ圏は1%未満となっています。

そのため日本、ユーロは金融緩和政策をやめらない状態であると野口氏は述べています。

日本の成長率が上がっていかない場合は、資金が日本から流出して円安がさらに進んでいく可能性があります。

それを防ぐためには、金融緩和政策や円安によって既存の産業の延命をするのではなく、参入規制を取り払い、新しい技術を導入して、どんどん新しい産業をおこしていくことが急務です。

まとめ

現在の日本では円安であることが、株高、好景気を維持するように思われていますが、円安は日本の経済の価値を損なうものであり、好ましくないことであることがわかりました。

また国際資本市場の中では、為替はとても複雑な要因によって決まっていくものであることもわかりました。

日本政府、日銀が進めている金融緩和政策には出口が必要です。

その前に実態の経済を成長させていかなければなりません。

そのためには、政府が成長政略を主導するのではなく、規制を取り払い、新たな産業が自発的に生まれる環境を整備していくことが大切だと思います。