進化医学を学ぶ本を読んでみた『病気はどこで生まれるのか』 井ノ上 逸朗 (著)

最近、鈴木祐 (著)『最高の体調』を読んで、進化医学という分野の存在を知りました。

そこでこの進化医学について基礎的な内容を学んでみたいと思い、本書を手に取りました。

改めてダーウィンの進化論とはどういう内容なのかを知りました。

この本からぼくが知りたいと思った内容を3つまとめます。

人間の進化のスピードはどれくらいなのか

進化医学は、ヒトの遺伝情報と、環境の変化のギャップが病気を引き起こすという考え方をとっています。

それではヒトの遺伝情報というのは、いったいどのくらいの速度で変わっていくのでしょう。

ヒトゲノムは全長60億塩基対です。

このゲノムの変異率は1世代で1.1× 10の-7乗となります。

これを60億と掛け合わせると、1世代で600の変異が起こることになります。

1万年前は500世代前になり、ゲノムの変異は30万箇所で、なんと0.005%しか変わっていません。

つまり、現代人のゲノムは狩猟採集生活をしていた1万年前とほとんど変わっていないのです。

1万年前の遺伝子と現代病はどう関わっているか

ターウィンの進化論は、次の3つの原理にまとめることができます。

  1. 遺伝を担うDNAは絶えず進化し、突然変異、組み換えなどによって多様性を保つ
  2. 進化は、世代ごとに変化することによって起こる
  3. 個体は自然淘汰の影響を受け、そのときの環境に適しない個体は淘汰される

ジェイムス・ニールは、ミシガン大学にアメリカ初の人類遺伝学講座を開設した研究者です。

彼は「倹約遺伝子仮説」を唱えました。

人類は原始以来のほとんどを飢餓状態で過ごしてきたため、栄養をうまく貯蔵できる人が生き残った。

つまり、糖尿病や高血圧といった疾患は、文明がもたらした病気であるという考え方です。

栄養をうまく貯蔵できる人が生き残ったというのは、ダーウィン進化論の3つめの原理から説明ができる内容です。

糖質制限医療では、ヒトが穀物を食べるようになって1万年しか経っておらず、穀物による血糖値の変化には対応できないという説に立っています。

ヒトは1万年前とは変わっていないのに、環境だけが大きく変わったという視点に立つと、様々な病気の原因が見えてくるということがわかりました。

遺伝子以外の進化医学の要因は

ヒトの細胞60兆個あります。

意外なことに、ヒトと共生している常在菌は、ヒトの細胞よりも多い100兆個もあるというのです。

どこにそんなにたくさんの菌がいるのかと驚きますが、消化器、皮膚、口腔、鼻腔、気管、泌尿器、あらゆるところに細菌がいます。

つまり、ヒトの進化だけでなく、ヒトと共生している常在菌の進化も併せて考える必要があるということです。

ピロリ菌が最近胃がんの原因であるとこがクローズアップされて、とにかく早期に除菌することが胃がんを予防するために大切だと叫ばれています。

これは確かに正しいのですが、著者はピロリ菌が太古からのヒトと共生してきたことで、ある役割も持っているという説も紹介しています。

ピロリ菌を持っていると、小児喘息にかかりにくいというデータがあります。

このデータは、ピロリ菌を除菌するタイミングはいつが最適なのか示唆を与える内容です。

抗菌、除菌の行き過ぎは、ヒトの常在菌叢を追放してしまう可能性があり、注意が必要です。

まとめ

ヒトのゲノムが1万年前とほとんど変わっていないということを実際の数字で確認でき、あらためて現代病は環境が引き起こしていると認識しました。

一方で、チンパンジーとヒトのゲノムは98%が同じであることもわかっています。

ではチンパンジーとヒトは98%が同じなのかといえば、明らかに違います。

同じように、1万年前のヒトと現代のヒトがほとんど同じとは言えない可能性も出てきます。

つまり、ゲノムだけではわからない違いというのもあると思います。

それは遺伝情報のオン・オフのスイッチの問題なのか、あるいは別の問題なのか、という疑問も湧いてきました。

引き続きこの分野の読書を進めていこうと思います。