2018年9月2日の日本糖質制限医療推進協会 講演会の夏井先生の講演は、得意の人類史の切り口から、パレートの法則へ展開する、興味深い話でした。
ぼくは夏井先生の『炭水化物が人類を滅ぼす~糖質制限からみた生命の科学~』に非常に感銘を受けました。
人類史に関する研究から、炭水化物がさまざまな病気の原因になっていることを紐解いているアプローチが独特でおもしろいです。
印象に残った点を3点まとめます。
1 石器は250万年間ほとんど変化していない
ヒト族が分離したのが495万年前です。
ヒトは495万年間のほとんどを遊動採集生活を送ってきました。
その間に使ってきた石器は2種で、礫石器が100万年、ハンドアックスが150万年、改良されることなく使われ続けました。
遊動採集生活の間、ヒトは現状を変えないことを、生存のための本能として獲得しました。
2割は変化を好み、8割は変化を好まないという、パレートの法則のゆえんです。
2 遊動採集から定住へ
最終氷期が始まり遊動採集が破綻したと夏井先生は解説しました。
そこでようやくスイッチが入り、ヒトは変化を好む2割によって少しずつ変化していきました。
採集氷河期が終わった1万2000年前から、広葉樹が広がることで、ピスタチオのようなナッツが豊富になり、ヒトは少しずつ定住するようになりました。
そして、変化を好む2割が小麦を加熱して食べることを発見し、それが今日の文明のきっかけとなりました。
加熱デンプンの発見のおかげで、人口が増え、文明が発達しましたが、予想もしなかった負の側面も多くでてきています。
それは、生活習慣病、歯周病、がんなど、古くのヒトが関わることのなかった病気に苦しむようになったのです。
3 新たな冒険家の時代
ヒトは変化を好む冒険家が活躍する時代、変化を好まない非冒険家が活躍する時代を繰り返してきたと、夏井先生は解説しました。
木の実を食べ始めた1万年前、小麦を食べ始めた1万2千年前は冒険家の時代であり、その後大規模小麦栽培が始まってからは非冒険家の時代に突入しました。
そして今、穀物主食を否定し、最新科学の上に新たな食習慣を構築しようという冒険家の時代に入り、それを江部康二先生が主導していると締めくくりました。
まとめ
たいへんおもしろく、空想力をかきたてられ、それでいて人類史の知識に基づいたしっかりとしたエビデンスのある内容でした。
糖質制限食とは、単なるダイエット、健康のための話ではなく、人類の未来をも変えようとする、大きなきっかけになる理論なのだと、考えをあらたにしました。